第13話「JKの気持ち」
・久遠有希花の視点
「……げ、幻滅しました?」
「や、し、してないっ! してないですっ!」
「うぅ……ほんとに、私って何考えて……」
「いやいや、俺が勝手に言ったことなんで……ほんとにっ、久遠さんは悪くないんで!」
「でもぉ……見られたし……あ、あんな……こどもっぽいやつぅ」
「こ、子供っぽいなんて一度も!! むしろ、その……えっーと、す、すごくいい感じでしたよ!」
「……うぅ」
「あぁ、ちょっ―—ほんとに、泣かないでっ」
やってしまった。
本当にやってしまった。
いや別に、男子の部屋でシャワーを借り、お風呂まで入ったから恥ずかしいとかそう言う話ではない。私としては彼の事をかなり信頼している。
今回は本当の本当に私のミスだった。パジャマを持って来させるという重大なミスを犯してしまったのだ。
少なくとも幼馴染の時の記憶じゃ優しくていい人だったし、お風呂を覗きに来るような変態ではないと思う。
……まぁ、ちょっとくらい興味は持ってほしいんだけど。女としてはね。
うん、そうだ、もっとこう積極的に覗きにきてh————って何考えてるんだっ私はっっ!!!
違う違う、そうじゃ、そうじゃない!! 鈴木さんが耳元で囁いてくるほどそうじゃない。私は下着を見られたんだ。ブラジャーはいらないと言った。だけどパンツに関しては気にしていなかった。
不覚、まじで不覚!
私としたことが本当に見失っていた。私の聖域でもある愛すべき彼女たちの事を本当に忘れていた! ブラジャーの存在に気づいた時までは良かったが……なんで私はパンツまで気づけなかったんだ!!
戻りたい、10分前の自分に戻りたい。呑気に鼻歌口ずさみながらお風呂で肌をぺちぺちしてた頃に戻りたい!! ド〇えもん、来てください! どうかどうしようもない私にお情けを‼‼
「……ほんと、すみません」
「や、別に……本当にいいですから。悪いの俺なんで……」
そんな私を前に彼はやや引き腰に謝った。その姿がどうしようもない私の胸にぐさりと突き刺さる。悔しすぎる、男子に見せておいて赤面してるのは私だけだし、もしかして何も思ってないの?
幼馴染だからって「何回でも見たことあるし今更ぁ」とかいう展開なの⁉ いや、というか私はまだ「幼馴染だったんだよ」なんて教えてないし、それはないか。もう結構前のことだし、一時期だけだから覚えてないだろう。
まぁ、とはいえ。
どちらにせよ、私だけが恥ずかしい現状に変わりはない。
「はぁ、死にたいよぉ……」
本当に、何やってるんだ。私。男子相手に、気を許しすぎだなぁ。
何気なくそう呟くと彼は肩をビクッと震わせた。
どうしたんだろうかと思って、一言。
「だ、大丈夫です?」
「あ、あの……死にたいとか言わないでください」
「あ……そ、そうですね。ごめんなさい」
少し悲しそうな顔で言う彼に渡しはすぐにハッとして訂正した。
そういえば1カ月くらい前にそんな風に叱られた気がする。ちょっと考えすぎだなって思うけど、彼からしたら急に自殺を考える女子高生に出会ったんだ。ちゃんと心配してくれている証拠だ。
でも、そう考えると優しさは変わってなくてよかった。
翌日、いつも通り二人で朝食を取り、それぞれ高校に向かう。途中の道までは一緒なのでアパートを出てから数分ほど雑談しながら交差点で左右に別れた。
「……はぁ、終わっちゃったなぁ」
帰ってきたら会えるじゃん……なんてことは分かっているけれど、少しとは言え離れるのはやっぱり苦しい。高校に行っても楽しみがない私にとって唯一の楽しみは登下校中にするさりげない会話だ。
まあ、強いて言えば図書準備室で同級生の夢と話すのも楽しくないわけじゃないが……彼女も暇ではないらしく、あまり会えないからだ。
「とにかく、無関心無表情で今日も頑張ろうかっ」
帰ったら彼がいるんだ。そう思えばやる気も出てくる。私はルンルンってほどもなかったが彼と何をしたいかを考えながら授業を終えた。
放課後、いつも通り合流し、家ではゲームを楽しみ、勉強をして、風呂に入ってあっという間に夜10時になっていた。
そう言えば、と私は思い出した。
パジャマ姿の彼を肩をトントンと叩き、
「あ、義隆君っ」
「ん——なんですか?」
「や、あの別に……特に急ぎでも何でもないんですけどいいですか?」
「はい、大丈夫ですけど」
「あの、良かったら今週末……一緒にどこか行きませんか?」
ちょっとあからさまだったかなと思ったが彼は少しだけ無言になったあと、すぐ了承した。
「どこに行く感じですか?」
「あぁ……えっとぉ、それはまだ……」
「そうですか……」
すると、彼はホッとしてたのかなぜか肩を撫でおろす。しかし、すぐに私にこう提案した。
「じゃあ、せっかくなら―—動物園に行きませんか?」
ちょっとびっくりして固まったが、否定をする理由なんてない。というか、久々に私の大好きな羊のジョーンに会いに行きたいところだと思っていたくらいだ。
「はいっ! 行きますっ‼‼」
私はすぐに了承した。
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