第27話「JK②」
さすがに緊張してきた。
というのも、理由は昨日の夜まで遡る。
俺が趣味であるFPSゲームをやめて寝床に着こうとしていた時だった。
ピロンッ!
とスマホが何やら鳴き声を上げる。すでに電気を消しているため、その音に少しびっくりしたが画面を見るとどうやらLIN--Eのようだった。
「相手は……久遠か」
こんな夜中に久遠が起きているなんて珍しいな、なんて思いながら俺は赤く表示が来ているチャット欄を押すと彼女から来ていたメッセージはこうだった。
『明日、私の高校の友達が義隆君のこと一目見たいって言ってたから帰る時に一緒してもいい?』
「友達……」
友達がいることは知っていたが俺は一瞬、頭を悩ませた。現在、久遠は高校でいじめにあっている。いじめの定義は人によって違うからそこのところは言わないが、とにかく嫌がらせに合っているのは確かだった。
個人的には漫画とかでもよく「友達だからいいよね?」的な脅しを仕掛けているのを見たことがあるから、高校で友達が少ない彼女にとって大丈夫なのか心配してしまった。
ただ、俺に拒否する理由もない。一緒に帰る時についてきてくれるのであれば特にいうことはない。それに、俺と久遠の関係は一時的なものだ。久遠との二人の時間を取られるのは少し嫌ではあるけど、束縛するのはきもいし————と了承したのだ。
とはいえ、やはり対面するのは……
「緊張するなぁ」
ただでさえだ。女子高の門前で近くの進学校の生徒が立っているってだけでも注目を買うって言うのに、知らない女性と会うのはもっと緊張する。
「え、あの人誰誰!? 誰かの彼氏ぃ⁉」
「うぉ、すげぇ……隣の頭いいとこの制服じゃん!」
「え、まじぃ!?」
「あ、私最近あの人見たことあるよ!!」
先週も一緒に帰りまくっていたせいか、若干名には知られているようだけど恐らく大丈夫だろう。
にしても……やっぱり、緊張で吐きそう!! こんなに注目されるのは慣れないって!!
委員会だって注目されてもせいぜい30人くらいだ。中で俺は発言なんかしないし、目立ちとはめっぽう縁がない。
ここまで異性に好奇の目で見られるのはどうしても我慢できない。ていうか、今日まで気づかなかったけど、こんなに見られるもんなんだな!!
「……はぁ」
なんか友達なんてどうでもよくなってきたなぁ。生徒会長とか、マジですげえよ。
すると、俺の右肩がツンツンと突かれる。
「あ、ごめんっ……まったぁ――――っ⁉」
久遠を想像して視線をあげていくと、そこにいたのは——生徒会と腕章を付けた見知らぬ女性だった。
「誰が待ってるんだ? 私は君を知らないのだがな?」
「うぇ!? だ、誰!?」
驚いてしまって、思わず考えていた言葉を口から出してしまった。
もちろん、知らない女子生徒はムッと顔を顰めて、俺の方を睨みつける。
「あぁ?」
「——っす、すみません……」
「許そう」
すぐさま謝ると彼女は分かってくれたようで「ふむ」と腕を組んで大きな胸を張りながらそう言った。どうやら俺は許されたらしい。こんなところで変に不審者扱いされても俺も困る。
「——んで、誰かを待っているのか? 隣の高校の男子生徒よ」
「あ、その……久遠さんを待っていて」
「久遠……あぁ、久遠有希花か」
「し、知っているんですか……?」
「もちろんな、次期生徒会長候補だからな。生徒会長ならサーチ済みだ」
「え、ま、まじですか?」
「あぁ」
どうやら俺はこの高校の生徒会長に声を掛けられたらしい。噂をすればなんとやら――だが、ってそうじゃない!!
久遠って生徒会長候補だったのか!
「あ、あの!!」
「ん、どうした?」
「生徒会長候補って……ほんとですか?」
「あぁ、ほんとだぞ。私の高校は毎年数名の候補が選ばれるし、私の推薦枠もあるからな」
「……そ、そうなんですか」
「それがどうかしたのか?」
「え、あぁ……いえ、なんでもないですけど……ちょっとびっくりして」
「ははっ。そうだな、少し珍しいかもな」
「ほんとです……まさか、それまでやっているとは思っていなくて」
そう言うと奥の方から久遠の声がして、生徒会長は「じゃあ、私も仕事があるから。あんまり長居はするなよ」と一言付け加えて去っていった。
ふと思う。
いじめの原因は候補絡みから来ているのだろうか……。
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