第3話「JKの唖然」



「……本気で言っているんですか?」


「はい……」


 初めて女の子が俺の部屋に入ってきた。

 普通の男子高校生ならばだけでウハウハ気分でドキドキの心臓とスリルを味わえるのかもしれない。


 しかし、俺はというと先程まで泣いていたはずの同い年の女子高生に溜息を吐かれながらジト目を向けられていた。


 事の始まりはというと何ら事のない会話だった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「へぇ〜〜、案外綺麗な部屋ですねっ……」


「案外ってなんですか?」


「えっ……あぁ〜〜、いやね、男の子ってこう、もっとうるさい感じの生き物だと思ってたからぁというかぁ?」


「うるさい感じの生き物?」


「あ、あく、あくまで個人的な意見だから!」


 気にしているのはそこではないんだけど……。て言うか初対面の男子にそれはひどくないか? 個人的な意見でもここにいるのは君なんだし。


 案外、俺は地雷ちゃんを踏んだのでは……なんて考えていると、



「あ、そうだっ! 名前!」


「名前?」


「うんっ! そういえば聞いてなかったなぁと思って!」


 確かに。

 言われてみれば名前とかその他諸々何も聞いていなかった。そこで、俺は自己紹介をする。


「俺は義隆流星よしたかりゅうせいです。学校は見てわかるかもしれないけど、隣の札幌南北高校に通ってる1年生でえーっと、帰宅部……です、ね?」


 って何言ってるんだ俺。最後の絶対いらない情報だったよな。

 すると、俺の言った言葉に目をぱちぱちと瞬きさせてその後笑みを浮かべた。


「え、帰宅部って……あっ。もしかして自慢ですか?」


「自慢に聞こえるかよ……」


「聞こえる時は聞こえますよ? ていうか、だって部活まで聞いてないのにって……よっぽど自信あるのかと」


「……そ、それは……いざ何言おうか迷ったっていうか。それだけですよ……」


「あはははっ。やっぱり、案外って感じですね……」


「っーーーーう、うるさい」


「ま、まぁっ、い、いい意味でだから!」


 その笑みをやめてくれたら安心できそうだよ。

 こちらとしては女子を家に招き入れることになってそれどころでもないんだから。


「それでっ、私の名前は久遠有希花くどうゆきかって言います! えっーと高校は女子校に通ってて……部活は私も帰宅部ねっ」


「別に部活は言わなくてもいいんですけど」


「あははっ、だって君もっーーーーてあぁ、名前の方がいいか……その、義隆くんも言ってくれたじゃん?」


「……だからそういう意味じゃないって」


「いいのぉ、結局お揃いだしいいきがしますよ?」


「まぁ……」


 先ほどまで泣いていたとは思えないくらいに元気ハツラツで驚いたがまぁ、あのまま放ってほいても困ったし、よかったはよかった。ひとまずは安心だろう。


 えへへと笑いながら、靴を脱いで久遠は俺の部屋の奥へとズカズカと入り込んでいった。




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 そして、今に至るわけだ。

 

 え、何が起こったの。今の話で? と思った人もいるのだろうが、それについては一瞬だったわけだ。


 久遠が楽しそうに奥の方に入っていき、捨てようと思っていて廊下の横に置いてあったゴミ袋が目に入ったのが始まりだ。


「ねぇ、これって……なんですか?」


「明日捨てようと思ってたゴミ袋ですけど……」


 指さして言ってくる久遠。

 そんな彼女を見て俺は冷静に答える。


「いや、それは分かってるんだけどさ……これは一体なんです、か」


「え? これはってゴミ袋以外の何者でもない……っ」


「そうじゃなくて、中身ですっ!」


「中身?」


 もちろん中身はご飯のゴミとかティッシュとかだけど、それがどうかしたのだおろうか。


 怪訝な視線を向けると、一瞬黙りこけて「もしかして」と呟いた。


「ん?」


「義隆くんっ」


「な、何ですか?」


「お昼ご飯とかって、何食べてるんですか?」


「えっ、あぁ……コンビニ弁当とか?」


 すると、先ほどまでの明るかった視線が一気に鋭く悪い方向へと変わった。ゴミを一瞥し、すぐに顔を向き直して囂々とした表情でこう言う。


「……本気で言っているんですか?」


「はい……」


 というわけで、俺は助けた黒猫JKに叱られたのであったわけだ。






 




 

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