第2話:男は過去を思い出す。ありゃねーわ! と。

◇◇◇◇◇


「――様。――様、起きてくださいまし」


 なんだ……どこかで心が腐り落ちそうなほど、あまい声が聞こえる……。


「起きていただけないと……その。抱きついてもいいですか? いいですよね♪ うふふ」


 ……あぁ、ここが極楽か……俺は死んだな。うん、ジジイに殺されたんだ。あの岩山で顔面を――顔? 顔が苦しッ!?


「ぶっは!? もごががががッ!?」

「あら、お目覚めになりましたか? もう少しおやすみくだされば宜しかったのに」

「ヴぁはッ!! ハァハァハァ……し、しめぇ。おまえは俺を何度その胸で、殺しそうになれば気がすむんだ?」

「うふふ、そんな人聞きの悪いことを言わないでくださいましな」


 〆と呼ばれる娘。それは紅の艶やかな西陣織を妖艶に着こなし、金色の透き通るような美しい髪からのぞく、怪しげで引き込まれるような青い瞳の顔立ちの人物であった。

 その娘の巨大な双丘を制覇した流は、控えめにいって絶世の美女。正確に言うと傾国の娘の膝枕で目覚める。

 

「ったく、お前という狐娘は」

「申し訳ございません。その、悪夢をご覧になっていたようなので、つい」

「悪夢ねぇ? まぁ、ジジイに昔に殺されそうになった、楽しい楽しい思い出に浸ってたのはちがいねぇが。あれから八年、か……」


 流は祖父との修行の日々を、苦々しく思い出す。そして今、何をすべきか思い出し上半身を起こして周りを見渡す。

 豪華と言う言葉ではまだたりぬ、贅を尽くした和室には複数の男女がおり、流の言葉を静かに待つ。


「それで準備は?」

「はい、整っております。ご指示どおり、一ごうから九百九十九號までの疑似神核を搭載した、骨董品を配置済みです」

「敵の動きは?」

「予定された行軍進路からはずれ、陽動に惑わされています。それにより統制に乱れがおき、混乱状態にあります」

「会敵時刻は?」

「進軍速度の遅れから予想するに、現地時刻で二十三時ジャストかと」


 その言葉に満足した流は、畳に置かれた鞘が会津塗の実に美しい妖刀を、左手に持ち静かに立ち上がる。

 

「さてと……行くぞ? これが最終決戦だ。誰かが言ったなぁ……俺が負けると。敵は天地を埋め尽くす軍勢? こちらは少数劣勢? だから寝言は寝てから言えだと? で……それがどうした!! ならばその理不尽を、俺がさらなる理不尽で埋めてやろう。天が邪魔なら天を力で引き墜とし、地が阻むなら力で地形をネジ変えろ!!」


 流は左手に持った妖刀を高速抜刀し、静かに見守る男女たちへ向けて言い放つ。


「さぁ、始めようか……骨董無双・・・・ってやつを、な?」


 その宣言をうけ、見守る男女から吹き上がる妖力・魔力・神聖力・精霊力・オーラ等、一騎当千の猛者たちの応えを見つめる流。

 居並ぶ顔は実に自信に満ちあふれてた。そんな頼もしい仲間と出会い、ここに至るまでの事を自然と思い出す。

 そう、あれは「異怪骨董やさん」へと、足を踏み入れた時から全て始まったのだから。

 

(そう言えば初めて異世界に放り込まれた時は、本当にひどいものだったな……それもこれもみんなこの女狐が悪い、か)


 流は側に控えている〆を一瞥いちべつすると、苦笑いを浮かべつつあの時の事を思い出す。

 〆に異世界へと放り込まれ、死の淵を覗いた懐かしい思い出を。



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