第28話 3人に勝てるわけないだろ!
(ここは…拠点の俺の部屋か…)
まだ脳が覚醒していない。ベッドに腰掛けて思い出そうとする。
覚えてるのは、いい形で左ボディブローがミストラの脇腹を抉り追撃をしようとして、見えない蹴りか?を側頭部にモロに貰って……
そこから、思い出せない。
俺は負けたのか…?
痛む身体を引き摺るように階下に降りる。
「ああー!ザク起きたー!!」
「何ぃ!? ザク、身体は大丈夫か!?」
エイト、サシャか。
そういえば、観に来ていたんだったな。
「あれから何日経った? 俺はどうなった…?負けたのか?」
「落ち着け、試合から3日だ。ずっと寝ていたぞ。お前…試合結果覚えてねぇのか?」
試合はミストラを助けるために12柱が乱入したことで、勝敗自体は俺の勝ちとのこと。
どうやら、ミストラは異能を限界まで使って死ぬ所だったらしく、それを12柱が止めたようだ。
(まったく覚えてない…俺は最後まで立っていたのか無意識に…)
俺の勝ちと言われても、全く勝った気がしない。
異能を駆使するミストラに押されて、最後は意識を飛ばされた。
そもそも、ミストラの本職は剣士だ。
もし、闘技ではなく敵として対峙していたとしたら、俺は早い段階で殺されていただろう。
くそ…知らない内に慢心していたのか?リパーを瞬殺した時に、その強さで満足してしまっていたのか…!
修行不足だ、鍛錬が足りていない。
しばらく、ギルドの仕事もせずに山にでも籠るか…!
修行不足を実感していると、アレッタが駆け込んできた。
「大変」
「お前が言うと大変そうに聞こえねぇな。それでどうした?」
「衛兵がザクを探してる」
「何でだ…?ザクが兵士ぶっ飛ばした件は片付いたはずだが…」
他には何もやっていないと思うんだが。
何の用だ?
エイトと共に衛兵の詰所にきた。
アレッタも来たがったが、申し訳ない…役に立ちそうもないので…
「お前がザクルードか?」
「そうだ。俺を探してるって聞いたんでね」
「お前には、衛兵への暴力行為の嫌疑がかかっている。来てもらおう」
「ちょっと待てよ! 警備隊長はどこだ?」
「誰だお前は? 奴ならつい昨日から行方不明だよ。今は俺が代理だ」
「何だと!?」
ふーん、きな臭い感じだ。裏で何か動いているっぽいな。
衛兵に聞こえないようにエイトにこっそり告げる。
(エイト、サルヴァに今の状況伝えて調べてもらってくれ。報酬は先日の試合が先払いだって)
(わかった。何かあっても必ず俺達が何とかしてやる)
(頼りにしてる)
俺は警備隊長に連れられて、街の上層階級が住む区域にある豪華な館に着いた。
「もしかして、伯爵様の館か?」
「黙れ、喋るな」
そうっぽいな。と、なるとクズと評判の次男の仕業か…しかし、何故今更?
もしかして、先日の闘技でたまたま俺を発見して辿り着いたって事か?
それにしちゃ、警備隊長が行方不明になったのが昨日と随分手際が良いな。
俺を連れてきた衛兵は館から出てきた兵士?騎士?のような奴と会話をし、帰っていった。
その騎士のような奴が今度の案内人か。
「本当にガキだな。こんなのが強いってのは本当かよ?」
「試すか?」
「っ!!ここで暴れるつもりか!? 殺すぞ!?」
「大人しくしてるよ」
少し殺意を見せたら、抜剣して脅してくる騎士。
安心しろよ、まだ暴れたりしねぇよ。
結局、その騎士が応援を呼び、3人の騎士に連れられたのは館の地下にある牢獄だった。
「入れ」
「おいおい、俺は罪人か?何の罪だ?」
「貴様は衛兵に不当な暴行を加え職務を妨害した」
「孤児にタカるのがお前らの職務なの?」
「黙れ!これは次期伯爵様が決めた事だ、逆らうなら死刑になるぞ!!」
次期伯爵ね…次男が好き勝手暴走してる感じか?そこまで馬鹿なのか?
勝手にやったら伯爵様も怒るだろうに。
…その伯爵も噛んでいる?優秀な人って街の評価なんだが。
この場で逃げてもなぁ…仕方ない様子見か。
「死刑ね、その前にお前らをどうにかしてやろうか…」
「き、貴様っ!」
「やる気か!?」
「さ、3人に勝てるわけないだろ!」
「冗談だよ、この牢屋に入ればいいんだろ。はいはい」
サルヴァなら裏から何かアクションを起こしてくれるだろ。とりあえずは待ちだな。
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