第5話 これは兄弟愛なのか

あれから家に戻り、夕飯を食べてから家の中で出来るような鍛錬を行う。

その際母親に変な目で見られたが、男の子だもんね。という理屈で納得したようだ。


次の日も朝早く起きて、軽く村の中を走る。

体力は合って困る事は無いからな、走り込みは必要だ。

(昨日はあまりの出来なさにショックを受けたが、よく考えれば今まで何もしてこなかったただの5歳児だからな。前世通りに出来なくても当然っちゃ当然か)


だが、そうなると気掛かりなのはガーマンの兄が仕返しに来たり場合。果たして勝てるかどうか。

殆どの場合、身体が大きく体力があるほうが圧倒的に有利。よって、子供の頃は年齢が強さに直結しやすい。


「合同試武祭で8位ねぇ」


合同試武祭は、近隣の村を集めて開催される武術大会みたいなものだ。

優勝すると今度はもっと大きな大会に出る権利が貰えるみたいだし、この辺は前世の大会と変わらんな。


10歳以下の子供だけで闘う部門と、年齢不問の大人用の部門があり、ガーマンの兄は10歳以下の部で8位って事だ。

ここらでいうと、4つの村が集まり開催される。10歳以下は確か60人くらい集まったんだったか。

9歳って事も考えると8位ってのはそこそこ凄いのか…?



「この村の子供で一番強い。か」



燃えるシチュエーションだな。





---


朝の鍛錬を終え、昼を食べ、また鍛錬に出掛ける。


(とにかく、今は1に鍛錬2に鍛錬っと)


昨日見つけた倉庫裏へ向かう途中。こちらに向かってくる2人が見えた。


(ガーマンと…隣にいるのはその兄か)


デカいな、俺より頭2つ位、横幅も1.5倍位あるな。こりゃこの村の1番強い子供って言われるわけだな。


「オイ、待てよ雑魚ザク」


何の用だ。とは言わない。分かりきっている事だしな。鍛錬場所へ向かう足を止める。


「よぉガーマン、散歩かぁ?」

「…ザクゥ、昨日はよくもやってくれたな」

「お前が弟に暴力を振るったザクって奴か」


まるで一方的に俺がやったみたいな言い方だなオイ。

良いように泣きついたっぽいな。


「一応言っておくけど、先に手を出したのはガーマンのほうだからな?」

「テメっ、ザク!」

「たしかに生意気だな、先とか後とか関係ねー。二度と逆らえねーようにしてやる」

「お前に出来んのかぁ?」


飛びかかられても良いように自然体を保って煽りを入れる。

此処でやっても良いが、邪魔が入りそうだなぁ。

やるならにはキッチリと決着はつけたいもんだ。


「フン! チビが! 3日後、村の大人達が南の魔獣狩に出るから、北側門から出てすぐの広場にこのくらいの時間に来い。逃げるなよ?」

「ケケっ、テメーはもう終わりだザク。今度から俺のことは様付けで呼べよ?」

「3日後ね、わかったわかった。楽しみにしとくよ」


北門の近くの広場か。大人達は南に集まるだろうし、見回りも手薄になりそうだ。

邪魔も入りそうに無いし、3日も貰えるとは願ったり叶ったりだ。

相対してみたところ、特に脅威は感じなかったし何とかなるな。この3日で出来る限り力を戻すことに専念だな。




---


ザクとガーマンの兄ゴーマンが決闘する。

この噂は村の子供達に瞬く間に広まった。

子供らの大半はザク寄りだが、ほぼ全員が同じ考えも持っていた。



無理だ、勝てっこ無い。



それもそうだ。

そもそもザクはまだ5歳だし、ゴーマンはずっとこの村の子供達の頂点に君臨していた。


「やっぱり、ザク君仕返しされちゃうんだ。だから謝りに行ったほうが良かったんだ」


ザクと同い年のカイルはそう思う。

ただ、ガーマンに逆らったあの時のザクの迫力を思うと心の何処かで期待もしていた。


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