第6話 決闘…のようなもの
3日後
さて、今日は決闘の日だ。
大分噂は広まってるみたいで、色々村の子供らから言われた。特にカイルからは何度も謝りに行こうという話をずっと聞いていた。
あいつはちょっと心配性すぎるな、図体デカいんだから強くなりそうなもんだが…
さて、そろそろ時間か。
「行ってきます」
「ああ、カイル。今日はお母さんも狩のお手伝いで出掛けるからね。気を付けて行ってらっしゃい。危ない事はダメよ?」
「はいはい」
危ない事をしに行く事に少し心は痛むが仕方あるまい。
とにかくこの3日は基礎体力作りと内功、よくいう気を練る事に尽くした。体力はすぐには身に付かないのでそこまで変わりはないが、多少体内の気の巡りは良くなってきたと思う。
この世界に来てから初めての闘いだ。楽しみだな。
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コソコソと大人の目を避けて村の北門から出て10数分程歩くと開けた場所に着く。
「チビ、逃げずに来たな」
「ザク! お前は今日から俺の奴隷だ!」
既にガーマン兄弟は来ていた。待たせちゃって悪いね。
しかし、俺達以外にも見物に来てる子供結構いるな。噂広まってたからなぁ。
「ザク君…もう決闘は止められないけど、危なくなったらすぐ謝った方がいいよ」
「ああ、カイルも来てたのか。まぁそこまで心配するような事にはならないと思うぞ」
大きく息を吸い、吐く。
軽くストレッチを行う。
身体は…少し緊張しているか。このくらいなら良い緊張感だ。気力は充分だ。
「さて、待たせたみたいだしヤろうか」
「ふん、ガーマン下がれ。このチビに思い知らせてやる」
ガーマン兄との距離は5m程。
まずは相手の出方を見てみるかっと。
「なんだぁ? 歩いて近づいてきやがって、死ねぇ!」
右の打ち下ろし。
ガーマンよりはしっかりした軸が出来てるな、だが俺からすればまだまだ隙がありすぎる。
一歩下がって顔の目の前をパンチが通過する。
躱された事でガーマン兄の身体が少しよろける、ココで水月に蹴り込みを入れる事も出来るが、せっかくの闘いだもう少し楽しもう。
「このっ!」
左ミドルか、右の打ち下ろしを避けられた後に無理に出すから腰が回ってない。ただ脚を投げ出してるだけだぞそれは。
今度は一歩前に出て、ガーマン兄の蹴りをしっかりとキャッチ。ヒットポイントをずらして受けたので威力は無くなっているはずだが、体格差のためか少しダメージがこちらにも入る。が、まぁ全く問題無いな。
残っている軸足を刈り取るように蹴る。
ダメージは無いだろうが、こんなチビに転がされるのは屈辱だろ?
「なっ!?」
「あ、兄貴! テメェザク!!」
「黙れ! ガーマン! こんなもの偶然だ!」
偶然って…そんなわけなかろうに…
右手を上下させて、早く立つように促す。
ギャラリーもいるし、煽りを入れて盛り上げないとな。
「ほら、早く立て」
「ザク君、すごい!」
「おお! ザク凄いな! 勝てるぞ!!」
「…チビが! もう許さねぇ!!」
激昂して襲いかかってくるが、さっきより大降りだし見え見えだぞ。
そうなるように煽りを入れたんだが、単純で助かるわ。
闘牛士ばりにヒラヒラと攻撃を躱していく。
「ちょこまかと逃げやがって…!」
お? タックルか。
そうそう、体格差を活かして組みつこうとするのは正解だ。
が、想定内よ。
低くなって突進してくるガーマン兄を跳び箱の容量で躱す。勢いを殺しきれずに転がるガーマン兄。
避けられた事を考えてないから、そうなるんだよ。
「どうした? 捕まえてみろよ」
「テメェ…もう殺す!」
うん、元気があって良いね。
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