第7話 冒険者視点と決着
ザク達が決闘まがいの事を繰り広げている時、村へ向かっている3人組がいた。
「ねぇー、エイト。まだ着かないの?」
「文句言うなサシャ。ガイアスを見ろ、静かに歩いてるだろうが」
「…」
「ガイアスはいつもあんまり喋んないだけじゃん」
この3人組は冒険者と呼ばれる者達。
ギルドという組織に属し、依頼を受け報酬を受け取る生活をしている。
「ほら、見えてきたぞ」
「全くー、遠いんだもの。何でこんな辺鄙な村の依頼受けたのよー」
「しょーがねぇだろ、他はもっとキツい依頼しか残ってなかったんだからよ。いつまでも文句ばっか言ってんな。ガイアスからも何か言ってやれよ」
「……何か聞こえるな」
「んー? あ、ほんとだ子供の声かな? 外は危険だってのに子供は元気だねぇ」
「しゃーねぇ、通り道だし注意してやっか」
しばらく歩くと開けた場所で子供達が集まっていた。
中心には2人の子供、小さいのと大きい2人。
「なんだろ? 喧嘩かな?」
「それにしちゃ、周りの奴ら観客みてぇな感じだな」
「あんな小さい子じゃ、勝てないし危ないよね。エイト、止めてきたら?」
「そうだな、オイ--「待て」」
「なんだよガイアス」
「…よく見てみろ」
木陰から観ていると驚くことに小さい子供が大きい子供を翻弄している。
まるで舞踏を見ているようだった。
「へぇ、凄いねあの子ー。エイトより体術凄いんじゃない?」
「馬鹿言え。しかし、確かに凄ぇな。まだ5、6歳だろアレ。大したもんだ」
大きい子も身体が大きく、同年代では強いんだろう。力強い攻撃を繰り出しているが、小さい子はそれを舞うようにヒラヒラと躱し続けている。
「……」
「どしたのー?ガイアス」
「…決め手が無い」
「そうねぇ」
小さい子は攻撃を避けた後、隙を見つけては打撃を打っている。普通ならここまで一方的な闘いであればとっくに戦意喪失してもおかしくないだろう。
しかし、悲しい事に体格差が大きく、小さい子の攻撃はそこまで大きい子に効いている様子は無い。
---
うん、大分勘も戻ってきたな。
このレベルじゃ何とも言えないが、最初の実戦にしては上出来だろう。
また、ガーマン兄の大振りのパンチを躱しざまガラ空きの胴に蹴りを放つ。
「グッ…効かねえんだよチビの攻撃なんざ」
まだまだ元気一杯のガーマン兄。
本気で打ち込むと身体が出来ていない今、こっちも怪我しそうだしなぁ。
仕方ない、そろそろ決めるか。
「オラァ! 捕まえたぞ」
ガーマン兄が俺の右腕を掴んで勝ち誇る。
ワザと取らせたんだよ。
「これで、チョコマカ逃げれ--」
掴まれた腕に力が込められる。その力の流れを見極め利用、下方向へ体を預ける。
するとガーマン兄の身体がガクっと沈み、それに抵抗しようと足を踏ん張る。
その瞬間、力の流れを上方に転換、ガーマン兄が浮き上がった時、掴まれた腕を再度下方向へ、側転をする様に飛び上がったガーマン兄が回転。側頭部を地面に打ち付ける。
【合気法
「ガァッ!」
本当はココから頭を踏み付けるまでが一連の動作なんだが、そこまでしたら大変な事になるしな。
業のキレはまだまだ記憶にある全盛期には及ばないが、合気も身体が覚えているな。いい感じだ。
「ぐぐ…この野郎…」
お、立つか。試武祭8位は伊達じゃないってか?
なら、ギャラリーもいる事だしな、こいつでトドメを刺してやる。
立ち上がろうとするガーマン兄から、10歩程距離を取りタイミングを待つ。
「クソチビが…やってくれたなぁ…どこだ!?」
「こっちだ」
ガーマン兄が振り返る時には、助走を付けた俺がすぐそこまで迫っている。
「喰らって飛べ!」
俺は勢いそのままに飛び上がり、空中で両足を揃えて畳む。そして、立ち上がったガーマン兄の胸元目掛けて畳んだ脚を伸ばして叩きつける。
ドロップキックだ!
いくら小柄な俺とは言え、走ってきた勢いをそのまま喰らえばたまったもんじゃないだろう?
ガーマン兄は勢い良く5m程転がり続けて止まった。
俺は地面に着地、しっかりと胸から順番に落下の衝撃を吸収するように落ちるのがコツよ。
立ち上がる気配の無いガーマン兄を見て、周りの子供達も決着を悟る。
「うおお!!! ザクスゲェ!!」
「なんだよ、最後の飛び蹴り!? スゲェ威力だ!」
「ザク君! 本当凄い!!」
---
「うわー! 凄いねーあの子、勝っちゃったよ! 最後の凄い技だったねー!」
「体格差あったから、どうなるかと思ったが最後はしっかりと決め技があったな。しかし、その前の投げは何だぁ?」
「…その前の投げ……あれは、12柱のオウガイ老の技に似ている…」
「あぁ、何処かで見たような気がしたが、そうか一昨年の武闘会で見た奴か」
「……同じかどうかは解らんが」
子供同士の喧嘩とは言え、中々良いものが見れた。
特にあの小さいのは才能の塊だな。成長したら大者になるかもしれない。
「ふーん、まぁ終わったみたいだし。そろそろ子供らを村に帰そっかー」
「ああ、そうだな」
エイトが声をかけようとした時、反対側の林から数体の何かが飛び出してきた。
「不味い! ゴブリンだ!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます