第24話 なるほど、強い
12柱の1人、【至近】のミストラ。
アレッタの話では、そいつの異能を理解している人間は少ない。
離れてると思ったら、急に隣に居たり。手が届かない距離から攻撃されたりするようだが、やられた人間ではよく分からなかったと言う。
ただ、異能抜きにしても凄まじく強いと言う事。
そんな、2年前に闘ったと言う闘士の話くらいしか今のところミストラの異能の情報はない。
「気付いたら隣にいる。か。瞬間移動みたいな異能か?」
「分からない、決め付けは危険」
「まぁ、そうだな」
今は、既に試合当日の控え室。
昨日、サルヴァから出場の依頼を受けて俺はここにいる。
帰ってから全員にかなり心配され、やはり辞退するように言われたが、俺が目指しているもの、そしてソレに向かうために避けるつもりは無いことを根気よく説明した。
考えてもみろ、こんな田舎の小僧が国有数の人間と闘える機会なんてないぞ?
今日は天昇の道全員で観にきている。危なくなったら乱入してでも止める気らしい。過保護だねぇ。
そんで、アレッタは付き添いで控え室まで来たと。
「控え室初めて、豪華」
「ああ、今日は良い部屋だな。前回は結構ボロい部屋だったけど」
「楽しい、自慢できる」
なんか、コイツ…ただ楽しんでねぇ?
個人的に闘技観に行ってるみたいだし闘技通みたいなもんかね。
「さて、そろそろ時間だが準備は良いか?」
サルヴァが時間を告げる。
その声はいつもの泰然としたものとは違い、堅さがある。
「緊張してるのか?サルヴァ」
「当たり前だ。この試合に割と俺の今後も掛かっている」
「ふぅん、その辺は俺には関係ないけどな」
「そうだがな……勝てるか?」
「さぁな、常識では無理だろ。俺はまだ10歳だぞ?」
「……何故ボスはこんな無謀な条件を受けたのだ……」
「今更だろ?まぁ、そこで観てろ」
あいにく、俺は普通じゃ無いんでね。
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「さぁ!やって参りました本日のメイン試合!なんとあの12柱の1人ミストラ選手が出ますっ!」
「いやぁ、先月のヒバナ選手も素晴らしい試合でしたからね。コレは期待したいところです」
「そんなミストラ選手の相手は、若干10歳の新鋭!前回はリパー選手を瞬殺した実力未知数の子供です!」
「長く闘技場の解説をしておりますが、アレほど驚いた事はございませんでしたね」
「賭けの比率は、皆さん圧倒的にミストラ選手有利の予想ですね」
「本職の剣は使用しないにしても、流石に12柱ですからね。その予想は当然だと思います」
「前回も下馬評を覆して大金星を挙げたザクルード選手が今回も奇跡を起こすのか!?それとも12柱の力をミストラ選手が見せ付けるのかっ!? さぁ!まもなく試合開始です」
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第一印象は金髪の優男。
ただミストラと対峙して感じたのは、底知れない力と自信。相手が子供ということで戸惑いは多少あるようだが油断はない。流石、国に選ばれる英傑なだけはある。
「君がザクルートかい?本当に子供なんだね…僕の事は知ってるかい?」
「あぁ。かの有名な12柱にお会い出来て光栄ですよ?ミストラ選手」
「じゃあ、ヒバナ、知ってるかい?12柱のヒバナ」
急に他の12柱の話?何だ?
「まぁ、名前は。有名ですから」
「そのヒバナがね、前回の君の試合観てたらしくてね。教えてくれたよ、異常に強い子供がいるって」
「買い被りなんじゃ?」
「いや、対峙してみてわかったね、君は異常だ。何よりその胆力。普通じゃ考えられない。だから僕は油断はしない」
瞬間、僅かにあった戸惑いすら無くし、陽炎のように揺らめく闘気。
これは…思った以上に…
『ゴオォォン』
開始のドラが鳴らされた。
(っ不味い!気圧された!)
一瞬で距離を詰められ先手を許してしまった。
疾い左拳での攻撃、頭を右にヘッドスリップしてこちらも左でのカウンターを放つ。
お互いの腕が交差し、互いにバックステップで距離を取る。
左カウンターは綺麗に躱され、俺の左頬には拳で切られた傷が残り、薄く血が滲む。
ミストラは微笑みながら言う。
「さぁ、小手調は済んだだろう?始めようか」
なるほど、強い。
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