第23話 闘技場再び

「じゃ、依頼は完了って事で」

「はい。問題ございません。お疲れ様でした」


依頼完了報告を行い、ギルドを出る。

そういえば明日はサルヴァからの呼び出しがあったな。また闘技場に出させてくれるのかね。



約束の日当日。

朝起きて、気の充実具合を確かめる。うん、好調。問題無し。

階下に降りると珍しくエイトが既に起きていた。


「おはよう。早起きだなエイト今日何かあんの?」

「ん?今日お前サルヴァってのに呼ばれて闘技場行くんだろ?ついて行こうと思ってよ」

「私も一緒」

「そうか、2人だけ?」

「そうだな、俺とアレッタだ」


…エイトとアレッタか。不安な2人だな。


「ガイアスかロジックは?」

「アイツらは今日は別の仕事だ。てか、なんだよ俺らじゃ不安か?」

「任せて」

「ねー、ザクー。アタシはー?」

「…いや、全然問題ないよ2人で」

「ねぇーアタシはー?ねぇねぇ」


うるせぇな、サシャは火に油注ぐだけだろうが。


こないだ、この4人で夜に飯食いに行って酔っ払ったエイトが他の冒険者と喧嘩になった時、お前後から煽って事を大きくさせてたろ?

アレッタは無関係装って端っこでこっち見てるだけで何もしねーし。俺が仲裁したよな?


サシャは留守番。決定です。




軽く街中を走ってきて、戻ってストレッチを行う。

そろそろ良い時間か。


「そろそろ行くわ」

「お?行くか、よっしゃ。行くぞアレッタ」

「了解」


さて、闘技場に着いたが…どこに……あ、いた。


「よぉ、ハギル」

「へへ、ザク。久しぶりだな。旦那はもうすぐ来るぜ。今日は連れがいんのか?」

「あぁ、俺が世話になってる人達だ。今日付き添いしてくれるんだと」

「エイトだ。ザクから多少聞いている。今日は騙すような真似はするなよ?」

「アレッタ」


全く、保護者かっての。

と、サルヴァも来たな。


「ザク、来たか。後ろのは天昇の道のメンバーだな?」

「良くわかったなサルヴァ」

「この街の事は基本把握している。連れが居ても良い。とりあえずこっちだ」


そう言って、裏口から入りテーブルと椅子が6つ並んだ部屋に案内される。


「で、今日は?」

「単刀直入に言うと明日、闘技に出て貰いたい」

「急だな…伝言貰った3日前には決まってたろ?何故だ?」

「本来は来月の闘技を頼むつもりだったが事情が変わった」


要は明日の闘技は、前回闘ったリパーのスポンサーがリベンジを持ち掛けてきたようでそれにどうしても勝ちたい。だが、向こうが提示する条件がまだ決まっていないという事で待ちの状態だったという事。


「事情はわかった。だが、受けるには隠し事は無しだ」

「…今回、この闘技場の賭けの元締めの権利が掛かっている……向こうの組織のがデカく、うちのボスはビビっちまってる。情けない事に言いなりだ」

「それで、向こうが出してきた条件は?」

「前回がよほど悔しかったようだな。条件はお前を指名だ」


俺を直接指名とは、そこまでラブコール送られちゃ応えないわけにはいかねぇな。

と、そこでエイトから待ったがかかる。


「ザクは冒険者で、パーティメンバーじゃあねぇが俺達天昇の道の仲間だ。裏稼業のアンタらの持ち駒にされるような事は困る」

「それについては問題ない。コレに勝てば俺が組織を仕切る立場に代替わりだ。他の奴らに勝手な真似はさせん。あくまで俺とザクは闘技場だけの関係で裏の仕事を頼むことは無い」


エイトは俺がそのままなし崩しに裏の仕事をするようになってしまうのを心配してくれたのか。

だから今日ついて来たのか、良い兄貴分だな。


「エイト、心配してくれてありがとうよ。まぁサルヴァはその辺りはしっかりするだろ」

「そうか、まぁザクなら何があっても問題無さそうではあるな」


そして、黙ってたアレッタがここにきて口を開く。


「相手は?」

「……【至近しきん】のミストラだ」

「!?」

「おいおい、マジで言ってんのか?」

「アレッタ、知ってんの?」

「12柱の1人。【至近】のミストラ。異能持ち」


12柱。

この国が決めた、各種分野で特別な存在でると認めた者達の称号。

多数が武に秀でた者達だが、頭脳面で12柱になってる者もいるらしい。

ミストラは勿論、武に秀でた者である。


「強い…んだよな?」

「強い、とてつもない」


何とかアレッタから情報を引き出すと

曰く、竜種を単独で倒した。

曰く、Sランクの異能持ちである。

曰く、4年前の戦争で1人で敵部隊200名を斬殺した。


他にも逸話があるらしいが有名なのはそんなところ。

てか、戦争なんてあったんだな。俺の村は平和だったから全く知らなかったわ。

しかし、斬殺ってことは


「そのミストラって剣士なのか?ってことは武器有り?」

「いや、素手だ。この闘技場は基本的に武器の使用は禁止のルールがメインだ」

「素手でも強い」

「あぁ、ちょっと12柱はな…。ザク、今回は止めといた方が良くねぇか?」

「いや、やる。せっかくだしな」



異能持ち、しかも12柱というこの国の最強格との闘いだ。

こんな機会普通に冒険者してるだけじゃ巡り会えないだろう。


逃す手は無い。


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