第10話 やはりあの子供は異常だ
冒険者に送られて村へ帰ってきた。
家への途中、ガーマン兄弟がいたが気不味い顔をしてそそくさとどこかへ行ってしまった。
これでこの村で過ごしやすくなりそうだ。
「じゃあ、ココ俺の家なんで」
「おう、そうか。またなザク。冒険者になる時は声かけろよ」
「じゃーねーザク君。もう無茶しちゃダメだよー」
「…元気でな」
なんでも、エイト達は村から依頼された魔獣狩の手伝いでこちらに来たらしい。
(村の大人総出プラス冒険者ねぇ、随分大掛かりなんだな)
母親はまだ帰ってない、今日は色々あったし軽く気を整えて休むとするか。
結局、母が帰ってきたのは日も落ち暗くなってからだった。
村人は何人か負傷したが、死者は出なかったようだ。依頼で来た冒険者が随分活躍したとのこと。
まぁ、彼らは強そうだったしこの辺りは平和だなんだ言ってたから問題なかったんだろうな。
いつか、手合わせ願いたいもんだ。
夜になり、床に着いた俺は異能について思いを巡らせていた。
「異能ねぇ…」
道すがらエイト達から聞いた情報によると
・異能とは普通では成し得ない現象を発揮するもので、その能力は多岐に渡る。
・必ずしも戦闘向けばかりの物ではなく、日常生活に役立つ物や、何に使うか解らない物もある。
・異能を授かるには教会での洗礼が必要。それでも授かるとは限らない。
・異能には国がランクを付けて、高いランクの異能持ちには優遇措置が取られる事もある。
・ランクはSが一番高く、次いでA、Bと下がっていきFまで区分けされている。
・魔物にも異能を使う奴がいるらしい。
こんな所か。
もし異能持ちと対峙する事になった場合、どういう能力か見極めないと、一瞬の気の緩みで負ける事も想像できる。
前世には無かった異能。今世は強い奴がわんさかいるだろうな。
「将来の事もなぁ、この村で一生を終えるつもりはサラサラ無いし出ることは確定として…」
エイト達は村から5日程離れたファルトという街を拠点に冒険者活動をしているようだ。
この国では比較的大きい街で、その街には闘技場もあると聞く。
(まずは、冒険者登録の可能な10歳まで鍛錬を重ねるとするか)
後5年もあれば、ココらの魔物には遅れを取ることも無くなるだろう。
その間合同試武祭に出るのも良いしな。
…異能授かれたら良いなぁ。
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「良し、コイツで最後だな」
「やったー終わったー」
少し時は遡り、魔獣狩を村人と協力して狩っているエイト達。今、最後の猪風の魔獣を退治し終わった所だ。
「いやぁ、ありがとうございます冒険者様。非常に助かりました」
「依頼なんでね、しっかりやるさ」
「それでも今年は死者も無く、大きく駆除出来て助かりました」
「また、依頼があるならギルドに出しておいてくれ。俺らがくるとは限らんが」
「ええ、その際は」
村長との話を終えて帰り支度をするエイト達。
「さて、帰るぞ」
「はぁー…街まで遠いなぁーやだなー」
「こいつ、本当に…おい! ガイアスからも言ってくれよ」
「……」
「んー?どしたのガイアス」
「何か気になる事あんのか?」
「…ザクの事だ」
5歳児とは思えぬ身体能力、胆力。あの投げに使った技術。
家まで送る中話た感じも、こんな村の子供が敬語を使えたり違和感がある。
「でもー、良い子だったよー」
「だな。身体能力とかはアレじゃね? 死ぬかも知れない時は実力以上の事が出来たりするだろ」
「そうそう、無我夢中って言ってたもんねー」
「…かもしれんな」
確かに、悪い子では無かった。
しかしこの能天気な2人は気付いていないのだろうか。
ゴブリン2匹を瞬く間に屠ったザク。
その時その顔は笑っていたのだ。
「…今は考えても仕方ないか」
ガイアスは期待と不安が混じったなんとも言えない感情に支配されていた。
ザクの将来。
末は英雄か魔王か。
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