第9話 異能とは一体

(一体…何なんだこの子供は)


冒険者エイトは、異常な物を見るようにザクを見下ろす。

ザクの村からの魔獣狩の手伝いの依頼を受け、村へ向かう途中に出会した子供。

最初は子供倒しで喧嘩をしていた、まぁよくある事だ。自分も何処にでもある村出身で、子供の頃は喧嘩っ早くしょっちゅう怪我をしていた。

しかし、下級とは言え魔物のゴブリンを倒すなど子供の頃の自分に出来るかと問われたら絶対に無理だ。

相手は武器を持って殺しに向かってくるのだ、どうしても恐怖で震えてしまい満足に動くことは難しいだろう。13歳で村を出て、冒険者になってから初めて魔物を殺したのだ。

しかし、目の前の子供は明らかに10歳以下だ。

そんな子供が2匹ものゴブリンをしかも素手で葬るなど、もし他人からそんな話を聞いたら法螺吹き呼ばわりをしてしまうだろう。

本当にこの子供は人間なのだろうか…




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なんか、すげー見てくるなこの人。気まずい。

いやね、わかるよ? 勇者だとか、英雄だとか、この国最強の人間の子供とかさ、そういうのだったら納得するんだろうけど、ただの村の何処にでもいるような子供が魔物を素手で斃すとかね有り得ないとでも思ってるんだろうな。

どうしたもんかね…転生云々は別に隠す気は無いんだが頭のおかしい奴と思われるのもなぁ。

とりあえず、会話て活路を見出すか。



「あの…」

「あぁ、すまんな坊主。怪我は平気か?」

「手助けと薬ありがとうございました」

「気にするな。とはいえ村の外は危険なのは知ってるだろう? この辺はある程度平和だとしても、さっきのゴブリンなんかはいるんだ」

「そうだよー、危ないんだからねー」


確かに大人ならゴブリンは問題ないだろうが、子供には危険極まりないな。

小さいとはいえ、殺意を持って向かってくるからな。


「すみません、気を付けます」

「(坊主は大丈夫だろうがな…)んで、坊主の名前は? この村の子供か?」

「あー、名前はザクルード。ザクって呼ばれてます。この村で母と2人暮らしです」

「そうか…うん」


何か聞きたそうにしてんな。

お前人間か? とか思われてたりしてたりな。


「俺人間ですからね?」

「お、おう…そりゃ分かるよ。ただ良く素手でゴブリンを倒せたな、怖くなかったのか?」

「いやぁ、無我夢中で」

「凄かったねー。君、何か村で武術習ってたりするのー? アタシあんな素早い動き初めて見たよー」

「習ってるというか…独学で。無我夢中だったんです」

「まぁココは危険だからな、村まで送ろう」



和ませるつもりで人間ですギャグを言ったが若干引いてたな。本当に思ってたのかこの人。失礼な。

いや、しかし良い経験が出来た。ガーマン兄とは実戦とは言え子供の喧嘩だったからな。明確に殺しに来ている奴との闘いは中々経験出来るものじゃない。

魔物にも俺の武は通じていたし、魔物と闘う経験をもっと積むのも有りだな。


そんな事を考えながら村への帰還中、冒険者と会話していく中で興味深い話が聞けた。


「ザクは将来王都で闘技者とかになるのか?」

「まだそこまでは考えてないです」

「敬語は要らねぇぜ? 随分礼儀正しいが俺ら冒険者は教養ないゴロツキみてぇな奴らばっかだからよ気を使う必要ねぇぜ、なぁサシャ」

「エイトと一緒にしないでー、アタシは教養あるもん」

「……ゴロツキみたいなのはお前だけだエイト」

「じゃあ、遠慮なく」


気の良い人達だなぁ、1人あんまり喋らない人いるけど。


「しかし、まだ子供だってのに本当に独学であの動きは凄ぇよ。大きくなったら冒険者になるのも有りかもな。パーティ組もうぜ」

「考えておくよ、その時はよろしく」

「ねー、凄いよねー。ザクは異能持ちなのかな?」

「異能って何? どんな事できんの?」

「色々出来るぜ? 火の玉出したり、雷起こしたり」

「へー、凄いな。エイトは異能持ってるの?」

「ああ、俺ら3人は異能持ちだぜ。これでもギルドじゃそこそこ有名なんだよ俺達」

「どうだー凄いだろー?」

「……」


なんだそれは。そんなものあるのか。

良くある魔法みたいなものかな。俺が異能持ちだとしたらカメハ○波とか、波動○とか打てたりするのか。夢が広がるじゃねーか。

しかもこの3人とも異能持ちなのか。割と異能持ってる奴っているのかな。ウチの村じゃ聞いた事ないが。


「異能持ってる人って結構いるの?」

「大体1000人いりゃ5、6人は異能持ってる感じかなぁ。能力の強さ弱さは有るけどな」

「へぇ、エイト達ってどんな異能なの?」

「あー…普通は自分の能力は教えねぇもんなんだ。やっぱ切り札みたいなもんだからよ」

「そりゃそうか、興味あったんだけど仕方ないね。エイトなんて英雄みたいに強そうだし、凄い異能持ってそうかなぁって」

「お、おう。そうかぁ? 照れるな。ザク、俺の異能見たいか?」

「見たい見たい! でも切り札なんだろ? 無理にはいいよ」

「なんだよ、子供が遠慮すんなよ! 俺のは知られてもそこまで対策されるもんでもないしよ。特別だぞ? 誰にも言うなよ?」

「見せてくれんの? 言わない言わない、内緒にする」


チョレーなこの人。子供とは言え会って間もない奴に切り札見せてくれんのかよ。

チョロ過ぎてこっちが心配になるレベルなんだけど、そのうち騙されて借金とかすんじゃねーのこの人。


「エイト、チョロ過ぎー。笑えるー」

「…その内痛い目を見る」

「うるせーな! 今回ザクの凄ぇ闘いに対しての報酬みてぇなもんだよ? なぁ、ザク」

「ありがとうエイト(やっぱ他の2人からもそんな評価なんだな)

「んじゃ、見てろよ?」



そう言ったエイトから不思議な気配がする。

なんだ、この感じ…

不思議な気配に驚いてると、気付いたら何も持って無かったエイトの右手に長剣が握られていた。


「はぁ!?」

「どうだ、スゲェだろ? 【自由な換装】って異能でよ。Aランク認定なんだぜ?」


…いや、スゲェなんてもんじゃ無いでしょ。

何も無かった右手に気付いたら長剣が握られていた。

何を言ってるのかわからねーだろうが、俺も何をされたのかわからなかったレベルの出来事だわ。

素手だと思ってたら、いきなり武器持ちになったりするのかよ、しかも暗器とかじゃなく長物か、やられたら堪らんな。





異能って凄い。







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