第2話 気に入らないが従わざるを得ない

厳かなギリシャ宮殿のような建物。

その中にいる白髪、白髭の老人は1人呟く。


「なんじゃ、コイツは…」


老人は所謂神と呼ばれる存在だ。

その神が、ある男の生涯を見て発した言葉だった。


「異常過ぎる、設計ミスじゃろコレ」

「どうされます?余りにもアレだったので魂は確保してありますが…」


老人の側に控える男が言う。この男もまた神であるが、老人の方が上位の存在であった。


「ふむ…無理だとは思うが、此奴ならばもしかしたら良いとこまでイケるかもしれんの……これ以上の札も今のところ無いしのぅ、呼び寄せよ」

「畏まりました」







---


「…まだ死んでいない?のか…?ここは何処だ?」


目を開けると、最期の記憶のある病室ではなく、白い石畳?ような物が敷き詰められた床に、眩い光を放つ蝋燭が何本も壁にあり、儀式に使うような祭壇のある場所だった。


「目覚めたか?」

「っ!? 誰だアンタ?」


祭壇の脇には白髪で白い髭を生やした老人と、余り融通の効かなそうな【真面目】を体現したような細身の男が立っていた。


「貴様! 平伏せっ! この方は-「良い」……はっ」


「いきなり怒られても、こっちも何がなんだか…失礼したようで」

「すまんの、此奴は中々頭が硬くてのぅ…優秀なんじゃが」

「はぁ…ところで、もしかして神様ってやつですかね?」

「その通り、理解が早くて助かるわい」


神様という老人曰く、俺にある場所に行って貰いそこでやって欲しい事があるそうだ。


「あー…申し訳無いが、まだ状況が掴めていないんで…とりあえず俺は死んでるんですかね?」

「そうじゃ」

「それで、行って欲しい場所って何処です?」

「まぁ、地球ではない別の世界になるのぅ」

「…それは、よく言う転生って奴ですかね?」

「似たようなものじゃ」

「具体的に何をさせるつもりで?」

「詳しいことは言えぬな、好きにして良いぞ」

「(なんだそりゃ…)……えー死ぬ前のままの状態で?」

「赤子からじゃ」

「今の記憶には」

「全てでは無いが、ある程度引き継ぐ。まぁキッカケがあるから心配は要らんぞ」


ヤバいな…話を聞く限りだとメリットが大きい気がする。何より、また始めから強さを追求できる点が大きい。

が、この手の話には裏が必ずあるハズ。どういう思惑なのか…


「なんで、俺何ですかね?もしかして結構頻繁に転生してる人っている感じですか?」

「ここ、数百年のうちではお主含めて3人かのう。200年ぶり3回目の転生じゃ。必ずしもお主である必要は無いが、まぁ人類最強のお主の方がなお良い、という形じゃな」


どうやら、俺の人生については知っているようだな。まぁ神様ってんならそりゃそうか。

推測出来るのは強さは求められてるって事か、何をさせたいかもその辺に絡んでくるんだろうな。


「ちなみに、断った場合は?」

「通常の輪廻に戻すだけじゃ。まぁ、たまたま目に付いただけじゃよ。断るのかの?」

「…転生したら、好きに生きていいんですよね?」

「そうじゃ」

「使命みたいのも無いんですよね?」

「そうじゃ」

「…アンタに何のメリットが?」

「損得では無いのぅ、強いて言うなら気紛れじゃ」


イラつくな…上から目線が気に入らない…

何か隠している気もする。

しかし、俺の望みとも一致することは確か。か。


「…わかった。転生しよう」

「うむ、そうでなくてはわざわざ会話した意味が無いわい。ではゆくぞ」


瞬間、目の前が真っ白になり意識を失った。





---


「宜しかったのですか? 何か疑っていたようでしたが」

「良い良い、理解したとしてもどうする事も出来まいて」

「さようで。今回はどうなりますかね?」

「ひょっとしたらという期待はあるが、望み薄じゃろ。所詮は人間よ」


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