何処までも昇りつめたい物語〜異世界でも最強を目指す男〜

第20話 別に倒してしまっても構わんのだろう？

「それ、俺が勝っても良いんだよな？」

大事な事だからな、八百長でこっちの負けが決まってるならストレスしか溜まらないから降りよう。

「…何だと？」

「いや、だから。俺が勝っちゃっても問題ないのかって」

「勝てると思ってるのか？相手は大人の、それも強豪の闘士だぞ？」

「やってみなきゃわかんないだろ？　で、どうなの？」

「ククククク、ハハハハハハハッ！」

突然大笑いし始めた男。いきなり笑い始めた男にギルも引いてる。

結局どうなんだよ。

「何が面白いんだ？いいから、どうなんだよ勝ってもいいのか？」

「ククッ、勝てるなら勝ってくれ。その方が今後こちらが有利になる」

「はぁ、有利ねぇ。裏社会ってのは大変だなぁ」

「ああ、違いない。控え室まで案内させよう。オイ！」

男が誰かを呼びつけるように声をかけると、部下らしき男がこちらに来た。

「この坊主を案内してやれ。ああ、そうだ坊主名前は？」

「ザクルード、ザクで良い」

「そうか、ハギルがそう呼んでいたな」

「ハギル？　ギルってのは」

「いや、まぁよ…分かるだろ？」

「偽名か、逃げるつもりだったもんな？お前」

「へへ、ザクよぉそれは言いっこ無しだぜ」

「あと何か必要な物はあるか？　無理を言ってるのはこちらだ、出来る限りのことはしてやる」

必要なものか、特に思い付かないな…

いや、１つあるか。ほぼ間違いなくやってるだろ。せっかくだからやるか。

俺はポケットから金の入った革の袋を取り出してハギルに投げる？

今の俺の全財産だ。

「ん、何だ？…金？」

「どうせ、賭け試合やってんだろ？それ全部俺の勝ちに賭けといて」

－－－

ザクが控え室に向かった後

「ハギル、アイツ拾い物かもしれんぞ」

「へ？　そうですかい？俺には良く分かりませんが」

「クク、あの年でこの状況になった上で賭け試合にまで頭が回る。とんでもねぇガキだ」

「はぁ…言われてみれば」

「どれ、あのガキに金貨1000枚賭けてこい」

「せ、1000枚って！？　旦那、今回の報酬全部ですか！？」

「俺の勘が、ココが勝負所と言っている。いいから行ってこい！」

この勝負に勝てば、この街の裏を牛耳る足掛かりになる。ザク、俺もお前に賭けてやろう。

－－－

控え室は個室なんだ、でも狭いな…元々奴隷が出るって事だったし、そういう扱いの場所なのかね。満足に身体動かすスペース無いじゃん。

仕方ないストレッチだけでもしておくか。

さて、デビュー戦だな。

こんな早く闘技場に出れるとは思って無かったな。胡散臭かったけど、話に乗って正解だったな。

異能は残念な結果だったが、この機会が得られたのはツイてる。

相手も相当強いと言われてる奴らしいからな。１つこの世界のレベルを見てみよう。

あ、ルール確認してねーや。

控え室に案内してくれた男に聞くか。

「そういえばルールってあるの？」

「今回は武器無し、異能有り、審判有り。降参か死ぬか審判が止める事で決着だ。それ以外のルールは無い」

「なるほど、分かった」

結構過激だな、目突き金的噛み付き何でも有りとは。前世だったら裏の格闘技だ。

その時、歓声があがった。

『ワァァァァー』

「出番だ。準備は良いか？」

「ああ、行こうか」

－－－

「さぁ、1試合目はモブ選手の勝利でした！いやぁ一回戦から白熱しましたね？」

「そうですね、今日はあの12柱のヒバナ選手が特別試合を行う事もあって満員ですからね。観客も随分と盛り上がってますね」

「そうですね、あの12柱の試合はオウガイ選手以来でしょうか。非常に楽しみですね！」

「ええ、それまでも良い選手が目白押しですから今日は楽しみですね」

「はい！では、次は今日の2試合目です」

「あのコウライの闘技場からの刺客！【暴走狼】リパー選手が出てきます！」

「狼種の獣人の選手ですね。私も試合を見た事ありますが強いですよ？」

「戦績は10戦7勝3敗と大きく勝ち越している選手です」

「えぇ、獣人の特性を活かした素早い動きが持ち味の選手です」

「対するは…あれ……あっ、急遽選手が変更になったようですね。えーと…えっ！？10歳！？しかも初参戦！？」

「いや…それはちょっと…無謀過ぎませんか？」

「えぇと、元々は他の若手有力選手との事でしたが…」

「これはおそらく試合になりませんよ？」

「いや、大変な事になりそうですね」

「えぇ…これは早めに審判が止める事を願いましょう」

この日この試合が一番の大荒れになる試合になった。