第26話 異能を攻略せよ
「遂にミストラ選手の攻撃がザクルード選手を捉えたぁ!」
「何でしょうか?先程もそうでしたがミストラ選手が消えたように見えました」
「確かに!ミストラ選手は一瞬で移動していましたね。やはり瞬間移動でしょうか!?」
「そこまでは不明ですが、攻略しないと勝ち目は無さそうです。今の攻撃でザクルード選手はダメージがありますのでピンチですね」
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「スゥゥゥゥ、ハァァァァァァ…」
大きく深呼吸後、息を吐き切り、最後に鼻で息を吸う。
息が整ったので再び構えて対峙。膝を軽く曲げ、前後左右に対応出来るようにする。
「立つか、結構手応えあったのにな」
さっき、急に下から顎を跳ね上げられた攻撃。
感触から右手だった。
そして、後ろ蹴りを放った後、目の前に現れたミストラ。
いや、表現が違うな、目の前に出てきたんだ。
「アンタの異能、少しわかってきた」
「へぇ、なら答え合わせしてみようかっ!」
お互いが駆け出す、先手はミストラ。
薙ぎ払うような右脚での蹴り。
それをしゃがんで躱して、残った軸足に向けて水面蹴りを放つ。
跳んで回避するミストラ。
(ここ!)
低い体制で空中にいるミストラへ、両手を地面に着き卍蹴り。
(躱せない攻撃、異能を使うだろ?)
一瞬、ほんの一瞬だが俺の蹴り足の先の空間が不自然に歪んで見えた。
そして、ミストラには蹴りは当たっていない。
ミストラは着地後、体制の低い俺へ下段の蹴りを放つがアクロバットな動きで避ける。
再び距離が空く。
下段の蹴り躱されたミストラは少し軸がブレている。
見逃さず距離を詰め、ワンツーから左ボディ、右フックの素早いコンビネーション。
3発は捌いたが、4発目は捌き切れていない。
(当たる! が、異能だろうっ!)
ミストラに顔に右拳当たる直前、再度不自然に空間が歪む。
元々当たる気の無かった右フックを急停止し、至近距離からの左膝でミストラの脇腹を捉える。
砂の入った袋を落としたような音、完全に膝蹴りは入った。
ミストラの顔が歪む。
更なる追撃をしようとするが、またも見えない打撃。顔に右からの衝撃を喰らって動きが止ってしまった。脳が揺れ、膝をつきそうになるが堪える。
向こうもダメージを負い追撃が出来ないようだな。
「クッ…」
「膝に良い感触があったぞ?肋骨が折れたか?」
「…君もフラついているようだね?」
(ミストラの異能。恐らくだが、空間を歪ませて2点を繋ぐような能力と見た。
間合の外からの見えない攻撃は自分の手の先に歪みを作り、俺の顔の近くにも歪みを作り繋げての攻撃。後ろに現れるのも身体が入るような大きな歪みを作れば説明がつく。
有効範囲は10数歩と見た、そして複数の歪みは作れない作れるのなら、常に歪ませておけば良いはず)
十中八九、それで合っているだろうが。だからといって完全に攻略は難しい。歪みを作るのに予備動作は無く、予想は出来ても実際に作るかはミストラの匙加減だ。
そして、もう一つ分かった事。
間違いなく体術では俺の方が上。本職が剣士という事らしいから当然ではあるが、俺の体術は12柱にも通用する事がわかった。
(そうと決まれば、やる事は1つだな)
近距離での打撃で押し潰す。遠距離は射程が圧倒的に違うのでこちらが不利。
突っ込む!
縮地を使い距離を詰める。どうやら、縮地を歪みで迎撃は難しいようだな?
だか、ミストラはバックステップを取りながらその場から消える。
後ろだろ!?
消えた瞬間に後ろ回し蹴り。ミストラは腕でガードして受け止める。
驚き、固まるミストラ。
動きが止まってるぜ?
先程と同じように高速でコンビネーション、躱しきれないミストラは歪みを作る。そこを狙う。
コンビネーション中の左中段突きが入ると確信。
だが、敢えてそれを途中で止めて空いている右手でミストラの左手首を掴む。
掴まれた腕を嫌がり振り払うように引いて、外そうとする。が、その引きを利用して右手で掴んだまま
一歩相手の奥に踏み込み、掴んだ手首を肩の後ろに持ってくるようにして投げる。四方投げの一種だ。
ミストラの後頭部を地面に叩き付けるが、右手を頭の下に入れて受け身を取られている。
追撃。と思った瞬間。またも見えない打撃が後頭部へ直撃。思わず両手を地面についてしまう。
その隙に転がって距離をとるミストラ。
(くそ…見えない打撃への対応が難し過ぎる…)
立ち上がったが、頭への打撃を貰いすぎたのか軽い脳震盪を起こしている。
(ここは会話で回復を…)
「どうやら、投げには対応できなっ!?」
消えたっ!目の前に…っ!
ミストラの右ストレート、ヘッドスリップで躱そうと動くも、動いた先に拳が出てきた。
読まれた! 直撃し、後ろへ飛ばされる。
鼻血がかなり出ている…鼻も折れたか…。
顔が痛い…肋骨もどんどん痛みが増している。
脳が揺れ、足元が覚束ない…だが……
楽しい。
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