#09 実践開始


翌日から早速実践開始。


登校時はいつもの様に僕のシャツを掴んだまま後ろをついてくる。

シャツを掴む右手は、若干いつもより強く力が入っている様に見えたので、校舎の中ではシャツを掴めないことへの不安やら緊張がそうさせていたのかもしれない。



下駄箱で上履きに履き替え、廊下で玲が履き替えるのを待つ。

僕に合流した玲が無言で僕のシャツを掴む。





「玲」と名前を呼び、あとは無言で玲の目を見つめる。


玲はシャツを掴む右手をブルブル震わせ、既に戦意喪失していた。





仕方が無いので、僕は強引にシャツから玲の右手を剥がし、そのまま手を繋いで教室へ向かった。


シャツを掴むの禁止を言い渡した以上、僕が初日からそれを許す訳にも行かない。

だからと言って今の玲では自分からどうすることも出来ない。


妥協として、シャツの代わりに手を繋いで、横に並んで歩くことにした。




うん、駄目だ。

僕にも成長が必要だ。

まだまだ玲に対して鬼になり切れない。



玲と言えば、さっきまで青い顔してたくせに、手を繋いだ途端ご機嫌だ。

人の気苦労も知らないで。


まぁ今日の所はいいや。

玲のニコニコ笑顔を久しぶりに見れたから。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る