#15 お世話係は熟考する

2つ目の試練はほぼ達成できたと思う。



料理を上達しようと一生懸命取り組んでいるし、メニューなんかも自分の考えを持って意思表示するようになってきている。

玲ママの誕生日祝いの時の料理や本人の様子を見る限り、目標以上の成長だと思う。





ということで最後の試練”卒業までに僕以外とも話せる様になる”に取り組むことにする。



まず状況など色々と整理してみることにした。


玲には作戦会議と言って、思いついた事、聞き取りした事を玲にも見えるようにノートに書きだしていった。



・現在、玲が会話出来る人間は。

玲ママ、ウチの母、そしてボクの3人


・3人のイメージ

家族、おとなりさん、付き合いが長い、料理が上手、こわくない、やさしい、ホッとする、大好き


・3人以外の他人のイメージ

こわい、声が大きい、キンチョウする、グイグイくる、セッカチ




ここで一旦書き取りを中断して「う~む」と考える。


確かに怖い人や声が大きい人も居るけど、皆が皆という訳じゃないし、そういう彼らだって常に怒ってるわけでも大声出してる訳でもないだろう。



それに、僕だって玲に対して大きい声を出すことはある。

だけども今もこうして傍に居ることが出来ている。


ここにヒントがあるように思う。


玲にとって違うように見えるかもしれないけど、きっと他の人たちと僕達は同じなのだ。

僕や玲ママやウチの母だって、怒ったり大きい声を出すことはある。



これはきっと玲の先入観みたいなものではないだろうか。

玲にとっての他人は、”何かされたから怖い”のでは無く、”何されるか解らないから怖い”のではないだろうか。



だったら、この人は玲にとって安全な人だよ、玲の味方だよ、と切欠を見つけるような付き合い方を探っていくのが良さそうだ。



と熟考しながら、「大好き」という言葉は、玲ママやウチの母のことだろうと自分に言い聞かせて敢えてスルーした。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る