#02 暗黙のルール

僕と玲は常に一緒にくっついている。


登園も朝の挨拶も教室でもお遊戯中でもお昼寝の時間も。


一度ベテランの先生が、もっと他にも交友を拡げた方が良いと思ったのか、僕たちを無理矢理引き離したことがあったが、その時は玲が大泣きして(声を出さずに涙と鼻水で顔をグチャグチャにして)ひきつけまで起こして収集が付かなくなってた。


結局、僕がハグして1時間ほど背中をポンポンしていたらようやく収まり、それ以来大人たちも僕たちを引き離そうとはしなくなった。


あの時おやつタイムだったから、僕はおやつ抜きだったんだよな。

解せぬ。




大人の人たちもそうやって少しづつ僕たちの扱い方を掴んでいき、玲のことはこの子に任せておけばOKという暗黙のルールが出来上がっていった。




でも大人たちは勘違いしている。

僕は玲の気持ちを理解出来ている訳じゃない。

だって一言も喋らないのだもの。

解る訳が無い。

泣きたいのはこっちだよ、と思いながらいつもハグして慰めている。


当時の僕にとって玲は、ニクイ存在では無いが、面倒な存在ではあった。


ただ幼少期に日常的にこういった経験をしていたことで、僕自身は感情を抑えることが巧妙になったように思う。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る