#03 いつもの登園

朝は、玲ママが玲をウチまで連れてきて、玲を預かる。 

玲ママはそのまま出勤。


時間まで玲と僕はテレビを見て過ごし、母の「そろそろ行くよー」を合図に玄関に移動する。


幼稚園までは、二人で手を繋いで歩く。


先を歩く母の後ろを追いかけ、二人とも無言で黙々と歩く。





途中商店街を通ると、顔なじみの大人から声を掛けられる。


「ジンくん、レイちゃん、おはよう」


「おはようございます」

「・・・・」


「ジンくんはいつも礼儀正しいねぇ」


「ありがとうございます」

「・・・・」


「レイちゃんは今日もお人形さんみたいで、可愛いねぇ」


「ありがとうございます」

「・・・・」


「転ばない様に気を付けて行ってらっしゃいね」


「いってきます」

「・・・・」


こんな風に、大人との会話は全て僕が対応する。


ご近所では、玲が喋らない大人しい子だということが認知されているので、僕が対応することに誰も疑問を持たない。




登園すると、門に立つ当番の先生への挨拶だ。


「渚先生、おはようございます」ペコリ

「・・・・」ペコリ


「ジンくん、レイちゃん、おはようございます。今日も元気にがんばりましょう」ペコリ


今日の当番は、渚先生だ。

渚先生だと玲も僕の横に並んで普通に挨拶出来る。(無言だけど)



これがベテラン先生(僕たちを引き離そうとした)だと、玲は僕の背中にぴったり張り付いて、顔を見せようとしない。未だに警戒心MAXだ。

ベテラン先生も何とか和解しようと玲に色々話しかけ構おうとするが、逆効果だ。


そんなベテラン先生を見ていると

(先生、ベテランなのに判ってないなぁ、渚先生のが若いのによっぽど玲の扱いを判ってるよ)と心の中で毒づく。


僕だって、おやつ抜きにされた恨みは忘れていないのだ。







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