#20 僕は珍しく見惚れてしまった


学校が終わったら僕の部屋で、昨日書いた下書きをもとに清書することにしていた。


清書を始める前にもう一度下書きに目を通した。



清書は先日購入したレターセットに書いた。


玲は猫のキャラクターがプリントされた便箋。僕は水色のシンプルなデザインの便箋だ。


玲は何回も書き直していた。

書き損じをする度に新しい用紙を取り出して書き直していたが、満足出来るものを書き上げると丁寧におりたたんで封筒に閉まった。


真剣に作業する玲の表情はとても綺麗で、僕は珍しく玲に見惚れてしまった。



封筒の宛名は二人ともフルネームで書いた。

レターセットに付属していたシールで封印し、ようやく手紙が完成した。



あとはいつどうやって渡すかだけれども、直接手渡しは二人とも照れくさいと意見が一致したので、今夜の内に郵便受けに投函することにした。






翌日学校から帰ると、母上から「お手紙読みました。二人ともありがとうね」とお礼を言われた。

内容については何も言われなかったけど、母上はとても機嫌が良かったので、喜んでもらえたんだと解釈した。



その日の夜、玲を家まで送ると出迎えてくれた玲ママが「玲ちゃん、お手紙ありがとうね!ママ感激しちゃった!」とハイテンションでお礼を言っていた。

お礼を言われている時の玲は、モジモジしていてなんだか可愛かった。


僕に対しては「ジンくんもお手紙ありがとうね! でもジンくんの気持ちは嬉しいけど、その愛を受け入れることができないわ!」と少女漫画に出てきそうなセリフをコレまたハイテンションでのたまわっていた。


おっと、書き直さずにそのまま清書したことが玲にバレちまった。


玲から殺気を感じたけれども、気が付かないフリして「とても残念です」とだけ返して、逃げるようにその場を後にした。



更に次の日、母上は玲ママから「ジンくんにラブレター貰っちゃった」と自慢されたらしく、僕の顔を見て思いっきり溜息をつかれた。


母上には「玲ママへの手紙は、求愛するような内容ではなく、まだまだ若くて綺麗なのだから、玲ママにはもっと幸せになって欲しい。と書いたんだよ」と説明したら一応は納得したみたい。

”僕がもう10歳上だったらアナタのことをほっておかないです”と書いたことは伏せておいた。





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