#39(最終話) 僕の憂鬱は



玲は変わった。

改善しつつある。

今後は少しづつでも社交的になっていけると思う。



僕はどうだろう。


渚先生は変わったと言ってくれた。

母上からは、玲への依存を諫められた。


そして、相変わらずこうやって難しく考えて、面倒な思考の渦に陥っている。




だけど、僕は判っていた。

大人ぶって解ってる気になって、物事をさも難解に分析しているようにみせて、ただ恰好付けているガキなのだ。



もっと単純な話だ。



僕は、玲のお世話をするのが好きだったんだ。


この役目を他人に譲りたくなかったんだ。


僕にしか出来ないと言ってもらいたかったんだ。


お世話係は大変なんだ、と同情して欲しかったんだ。


難しい理屈をこねて、周りから異質に見られていることへの言い訳をしていたんだ。



母さんに「よくやった」と言ってほしかったんだ。


花さんに「ありがとう」と言ってほしかったんだ。






いや、違う、


無口な玲に『好き』と言ってほしかったんだ。


僕の憂鬱は、本当はこんなにも、シンプルなのだ。











お終い













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