#26 お世話係の役得
その夜、渚先生のお宅へお邪魔する為の準備について三人で話し合うことになったので、石黒家へお泊りすることにした。
僕は着替えを取りに行くと言って一人で自宅へ帰り、速やかにお風呂へ入った。
もちろん、先日の様な「三人でお風呂に入ります!」を回避する為だ。
風呂を上がりパジャマに着替えて石黒家へ戻ると、玲ママから「なんで一人でお風呂に入っちゃってるのかな?」と目が笑っていない笑顔で言われたけど、「なんのことですか?」とすっトボケておいた。
二人がお風呂に入っている間に、渚先生宅へお邪魔するのに必要な準備を僕なりに箇条書きにしておいた。
・渚先生宅の場所の確認(地図の用意)
・移動方法の確認。 バスの経路、料金
・手土産の準備
・渚先生とどんなお話がしたいのか、事前に整理
二人がお風呂から上がると、ドライアーを使って玲の黒髪を乾かしてあげた。
玲ママも「ジンくんわたしもおねがい」と言うので玲と交代で座ってもらい玲ママの黒髪もドライアーで乾かした。
玲や玲ママの髪を乾かしてあげるのは、別に初めてのことではなく、最近僕が石黒家へお泊りする際は定番となりつつある。
黒髪に手櫛を通しながら、ドライアーの風を満遍なく当てていく。
シャンプーの香りなのか、二人が発するフェロモンなのか、刺激的な香りが辺りを充満する。
普段、玲や玲ママに抱き着かれてもドキドキしたりしないが、二人の髪を乾かしてあげる時は、とてもドキドキする。
僕に黒髪をされるがままになっている時、流石は親子、脱力して目を閉じて気持ちよさそうな二人の表情はそっくりだ。
そんな二人の表情を見れるのもお世話係の役得である。
話し合いは、川の字に並べた布団に寝転がりながら行われた。
僕の用意した箇条書きを確認して貰い、これに沿って明日から準備することになった。
手土産は、母上にも相談した方が良さそうだが、候補として手作りのクッキーやバウンドケーキ等があがった。
それ以外にも、当日着ていく玲の服装の話にもなった。
これについては玲ママが張り切っていたので、僕の出番は無さそうだ。
準備について一通り話が終わったので、さぁ寝ようかと消灯すると玲ママから1つのお願いをされた。
「ジンくん、これから玲ママのことは、名前で呼んでちょうだい。花さんって呼んでね」と。
玲がガバっと起き上がり、消したばかりの照明をつける。
「ママ何言ってるの!?」
と怒りだすも、当の本人は
「すぴ~ すぴ~」と下手くそな寝たふりでスルーしていた。
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