#23 待望の手紙



玲は渚先生への手紙を3日かけて書き上げた。


玲の希望で、今回も僕がチェックした。


今回も素敵な手紙だと素直に思った。


玲の幼稚園時代しか知らない人がこの手紙を読んだら、ビックリするのではないだろうか。

あの無口で超人見知りの女の子が、こんなに丁寧な文章の手紙を書くなんて想像出来ないと思う。


渚先生、この手紙を読んで喜んでくれるといいな、と願わずにはいられなかった。



封筒に、住所と宛名、玲の名前と住所を書いて、切手を貼って準備完了。



玲と二人で手を繋いで、近所のポストまで投函しに行った。



「渚先生、返事くれるといいね」と玲に問いかけると


「うん・・・」と緊張している様子だった。








普段学校が終わると、玲は自宅によらずにランドセルを背負ったまま僕の家に直行するのだけど、手紙を出した翌日からは自宅の郵便受けを確認してから僕の家へ入るのが習慣になった。

夏休みに入ってからは、僕の家で一緒に夏休みの宿題をしながら、家の前をバイクが通るたびに部屋の窓から覗いて郵便配達じゃないか確認していた。




渚先生からの返事の手紙は、手紙を出した日から10日後に届いた。


郵便受けで返事の封筒を見つけた時の玲は動揺している様だった。

待ち望んでいた返事が来て嬉しいはずなのに、今更になって「どうしよう、本当に返事きちゃった」と急に不安になってしまったのだろう。


手紙は僕の家にて開封することになった。


玲に開封するのを頼まれたので、玲の前でハサミを使って丁寧に封筒の端を切断した。


中身が入ったままの封筒を玲に返して、手紙を読むように促すと

「ジンくんも一緒に読もう」と泣き言を言い出したので、

「まずは一人で読んでごらん。時間がかかっても良いから、判らない漢字とかあったら辞書とか使って。ね?渚先生は玲に読んで欲しくて返事を書いてくれたんだよ」と諭すと、緊張した面持ちで中の便箋を取り出した。



玲が手紙を読んでいるあいだ、僕はその様子を無言でずっと眺めていた。


最初は緊張していた表情も読み進めるにつれ解れていき、頬も若干赤くなっていた。


一通り最後まで読み終えたようだったので「どうだった?」と尋ねると、「もう一回読み直していい?」と言うので、「僕のことは気にしなくていいから、ゆっくり読んでいいよ」と了承した。






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