#06 背後レイとお世話係


小学生になっても玲は相変わらず本が好きだったが、自分で読む様になっていた。


多分、国語の授業で教科書を読むことで、自分でも文章が読めるようになったのだろう。

普通の当たり前のことだけど、玲にとっては大きな成長に思えた。




お昼休みになると、図書室で借りた本を片手に僕の所へやってくる玲。

それを見て「次の本借りにいこっか」と僕は問いかけ、玲は無言で頷く。




1階の教室から3階の図書室まで僕たちは無言で歩く。

玲は左手に本、右手に僕のシャツを掴み僕の後ろをついてくる。


いつもこうやって図書室まで移動するから、上級生達から玲は”背後レイ”と揶揄われるようになった。






上級生達に構っていると図書室で本を選ぶ時間が無くなってしまうので、僕は無視して歩き続ける。


周りの子供たちから見て、僕たち二人が異質なのは解っている。

僕が”お世話係”と言われていることも知っている。


揶揄われると悔しいし、玲の悪口を言われると腹も立つ。


でも僕は何も言い返さない。怒りを露わにしない。


玲ママの涙を見た僕は、自分よりも玲を第一に優先することを誓ったのだ。

チョロいな僕。



今は、図書室で次の本を借りることが玲の望み。

玲にとって恐怖の対象である上級生に僕が言い返すことなんて望んでいないのだ。





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