#12 これからは朝ごはんは私が作りたい


玲ママのお誕生日前日。


バウンドケーキは、初めてだったけどとても上手に焼けたと思う。

アーモンドのスライスや干し葡萄を入れた。

僕は味見したくなって少しだけでも食べてみたかったが、玲と母に止められた。


手を伸ばした僕からケーキを守っていたときの玲の顔は怖かった。

長い付き合いで玲に睨まれたのは初めてかもしれない。


ごめんなさい。もうしませんと謝ったら許してくれたけど、ケーキは玲と母の手でさっさとラッピングされて、僕から遠ざけられてしまった。




当日は、朝からカレースパゲティの材料を持って、玲の家を訪ねた。

材料とか玲の家に置いていたら、バレちゃうからね。




洗濯や掃除器で掃除をしていた玲ママにあいさつをし、今日のことを僕の方から説明した。


前々からウチで料理の練習をしていたこと。

玲ママをビックリさせたくて内緒にしていたこと。

今日の玲ママの誕生日を、玲の手料理でお祝いしたいこと。


玲ママは「ウソ!ホントに!どうしよ!嬉しい!」と目をキラキラさせながら感激していた。

感激する玲ママは、大人なのに子供のようで可愛らしかった。





カレースパゲティは予定通り玲が調理した。

僕は玲の横で、野菜の皮剥きを手伝ったり、使い終わった器具を洗って片づけたりして助手に徹した。


玲ママはそんな僕たちをケータイでパシャパシャ撮影していた。




一通り料理が終わり僕は用済みになったので、後は親子水入らずでと引き上げようとしたら、玲と玲ママに全力で引き留められた。

玲ママからは「ジンくんは玲ママの誕生日を一緒にお祝いしてくれないのかな?」と軽くお説教された。



カレースパゲティもバウンドケーキもとても美味しかった。

玲ママも「美味しい!美味しい!」ととても喜んでくれていた。


食事中は、これまで練習した料理や、練習中の失敗談や苦労したことを色々話した。


玲ママは「これからは玲の料理が色々食べられるのね!」と凄く楽しそうに眼をキラキラさせていた。




それを聞いた玲が「これからは朝ごはんは私が作りたい」と言い出した。


これには玲ママも僕もビックリした。


僕の後ろを黙って着いてくるだけだったあの玲が、自分の言葉で自己主張したのだ。


それを聞いた玲ママはとうとう涙腺が崩壊してしまい、玲と僕を力一杯抱きしめて「うんうん、朝ごはんお願いね!」と涙声で玲にお願いしていた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る