#32 僕はイエスマン



月曜日。


早朝から玲が来て母上が朝食を準備するのを手伝っていた。


「花さんの朝食は準備してきたの?」と尋ねると、大丈夫とのこと。



朝食を済ませ、早速クッキー作りを開始する。



結局、選んだ3種類を全部作り、盛り合わせにしてラッピングをすることになった。

今回作戦の全てを玲が考え決めた。

僕は玲のイエスマン。



それぞれオーブンの設定が微妙に違うようで、別々に焼く必要があり、また一度にオーブンで焼ける量が限られる為、フル回転で焼いていく必要がありそうだ。


今日は玲が張り切っている為、僕は助手に徹することにした。


昨夜、玲はプリントアウトしたレシピを一生懸命読み返していたので大丈夫だろう。

手際よく進めている。



僕は玲に指示を出してもらい、言われた雑用をこなす。

玉子を割って撹拌したり、トレイにクッキングシートをしいたり。

型抜きも少しやらせてもらった。


焼きあがったクッキーは、お皿に移して邪魔にならないようにリビングへ運ぶ。

つまみ食いすると玲が怒ると思いガマンしていたが、今回は玲の方から「あ~ん」と言って焼き立てを食べさせてくれた。


僕が「美味しい」というと、満面の笑みを浮かべて嬉しそうだった。



全部焼き上がり、最後の一皿をリビングに運ぶと、かなりの量になった。


渚先生への手土産だけでなく、母上や花さん、僕の分も用意してくれるとのことで、素直に嬉しかった。



ラッピング作業は二人でやったが、僕の分は玲がラッピングしてくれた。

「ジンくんへ」と手書きのカードを貼り付けてくれて、それを見るとニヤニヤが止まらず、我ながらキモイと思った。



ラッピングが終わり、キッチンを片づけ調理器具なども片づけると、母上がアイスティーを用意してくれたので、3人で余ったクッキーでおやつタイムを満喫した。








その日の夕方、日陰になった縁側で涼みながら玲と明日の事を相談した。



渚先生と会話するのに、事前にどんな話をしたいのか整理しておいた方がいいだろうと考え、玲にはメモ書きにしておくことを提案していた。


メモの内容は、僕は敢えて見ない様にしておいた。

あくまで玲一人でチャレンジするべきだと思う。


何かあれば助け舟を出すつもりだけど、今から手助けすると最初から僕に頼ってしまうかもしれないからね。

玲にもそのことをそのまま話して、だから頑張れと応援した。




夜、明日のコーディネートを花さんと最終チェックするとのことなので、玲を早めに家まで送り

「明日は9時前には迎えに来るね、おやすみなさい」と言って別れた。






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