#36 僕のダメなところ


渚先生の家へ遊びにいってから数日が経った。



玲は翌日には先生へのお礼の手紙を書いて出していた。

試練だと言って色々取り組んでいたけれども、もう僕からアレコレ言う必要がない様に思える。

何か相談された時だけ、答えていこうと思う。





僕の方はというと、自分の問題へ向き合おうと、母上や花さんに相談したりしていた。


二人には、

「奥田仁はどんな人物か」と「奥田仁のダメなところ」の二つを尋ねた。

何か取っ掛かりが欲しくて、ダメ出ししてもらおうと考えた。




母上からは

「礼儀正しく物怖じしない。家族思い。家族というのは玲ちゃんや花も含めて」

「物事を難しく考えすぎている。玲ちゃんに依存されていると思っているようだけど、あなたも玲ちゃんに依存している」


花さんからは

「わたしにとって唯一心を許せる男性。息子のようでボーイフレンドのような存在?」

「玲ちゃんにはいつも甘いのにー、わたしには時々厳しいですー、ぶー」






花さんの意見はあまり参考になら無かったので、母上に引き続き相談に乗ってもらうことにした。





「物事を難しく考えるというのは、駄目なことなのでしょうか?」


「ダメでは無いけど、損をしていると言える。石橋を叩いていたら渡れなくなった。とか、残り物には福があるといって待っていたら何も残っていなかった。とか、そういう経験があるんじゃないかな? それ以外にも、この人は何でも難しく理屈を言うから面倒な人だ、と思われるというのも、損をしていると言える」


「なるほど・・・思考に囚われすぎている自覚はありましたが、そう言われるとその通りだと思えます」

「次に、玲に依存しているという話ですが、最近自分でも自覚するようになってきました」


「小さい頃はそんなこと無かったと思うけど、最近の仁は玲ちゃんを優先しすぎているように見える。玲ちゃんの為、玲ちゃんが困らない様に、玲ちゃんが成長する為には、そんなことばかり考えているように見えて、自分の事などどうでもいいと考えているんじゃないかと心配になる」


「そうですね。自分でそうしようと決めて行動してきたつもりでしたが、最近そのことで自己嫌悪に陥ったばかりです」


う~ん、と母上は腕組みをしながら考え始めた。


「お母さんからのアドバイスは、あくまで参考になればだけども、仁も何か趣味を見つけたらどうかな。出来ればその趣味は玲ちゃんと関わりが無い物、仁一人で出来ること。例えば絵を描いたり、楽器を始めたり、スポーツでもいい」


「趣味ですか。それを勧める意図を聞いてもよいですか?」


「まず一つ目は、玲ちゃん離れ。趣味に没頭している間は頭の中を玲ちゃんから切り離す。二つ目は仁の視野や交友を拡げる。三つ目は、単純にあなた自身の精神的な成長の為、というのが目的かな」


「母さんの意見を聞いていま率直に感じたのは、新しい趣味というのは興味が湧きました。その目的にも納得出来ました」


「ちょうど今は夏休みだし、ゆっくり考えるといいですよ」


「そうします。とても参考になりました。ありがとうございました。母さん」



そうか趣味かぁ

水泳のこととか考えて居たけど、新しく趣味を始めると言えば玲に対しても角が立たないし、すんなり始められそうだ。


何となくだけど、自分の今後の方向性が見えてきたように思えた。




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