第7話:[閑話]〜竜人とお姫様のものがたり〜
あれからお母さまとのレッスンは続いている。
今日はお母さまが“恋のレッスン”ということで恋話の本を渡してきた。
これでも読んで心を潤せと。
あー、これお母さまの大好きな…
(→解説:これより、ファンタジー大好きお母さま一押しのものがたりが始まります。)
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深い森に囲まれたとある小さな王国にそれは美しく、冷徹なお姫様がいました。
お姫様は、幼い頃から恐ろしいほど聡明で、子供とは思えない性格の持ち主でした。
一方、彼女の父であり王である人は、感情の起伏が激しく、政にはあまり向かないと評判の人でした。そこで、彼女は、自分を嫁がせないことを条件に幼い頃から父の手助けをしていました。例えば、手の凝ったとんでもなく美味しいお菓子を特産品として貿易したり、清潔剤を売ったりして国の生活水準も底上げされていきました。
もしもーし…姫は、転生者さんですか?
子供と思えない性格、便利品ポンポン思いついちゃう方〜
っていうか、婚約したくなかったって、絶対、姫に転生したから自由なライフを送らせておくれって意思表示・・・笑
(→注意:話の邪魔です。黙ってください。)
しかし、殊更に美しく有能な彼女を世の男性が放って置くわけもありません。彼女は父に裏切られ無理やり他国の王子と婚約させられてしまったのです。彼女はそんな現実に戸惑い、亡命をしようと試みます。
この国は深い森に覆われており、そこを抜けなければ他国には行けません。彼女は少量の荷物を鞄に詰め込むと城をあとにしました。
森を進むにつれ現れる凶暴な魔物に、チート魔法で抵抗しましたが、あまりの数に耐えきれず、とうとう魔力の限界に達した姫は、あまりにも疲れていたのか、湖のほとりで眠ってしまいました。
何刻経ったでしょう。突然、水面が大きく揺れる音で、目を覚ました彼女は、思わず息を飲み込みました。
なんとそこには、月明かりで鱗をきらめかせた、真っ白なドラゴンがいたのです。ドラゴンは目を細めて満月を見つめています。彼女は、美しいと感じるのと同時にとてつもない恐怖に駆られていました。
---いままでの魔物たちとは比べものにならない、
私はここで最期を迎えるのか。---
彼女はそう覚悟を決め意識を手放しました。
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「お嬢さん!大丈夫ですか?」
私が意識を取り戻すと、そこには美しい男性がいた。
彼は、とても優しく親切なのに、少し怖いような気がしてしまう、不思議な人だった。
彼は表情が豊かで、愛嬌があって、ユニークで、私の足りなかった心の隙間を埋めてくれる存在だった。
自分が国を出たいこと、これから何もあてがないことだけを最小限に伝え、別れようとすると出会ったばかりの関係なのに、私と共に来てくれることになった。
私は、理由もなくうれしかった。
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こうして、姫と心優しい男性は他国に渡るたびに新しい品物を開発し広め、彼女たちが過ぎた後の町は必ず栄えていきました。
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ある夜、彼が倒れた。
ここ最近忙しく徹夜続きで、「ブラック○○だー」と意味のわからないことをほざいてしまうほどに二人であくせくしていたからだろうか。彼を布団に寝かせ、差し込む月明かりが彼の頬を強く照り返した。よく見ると彼はだいぶ痩せこけていて、最近彼を気にかけていなかったことに反省していた。
すると、みるみる彼の体は小さく、そしてしなやかな鱗で覆われていき、最後には綺麗なドラゴンが横たわってい流ではないか。
私は、この光景に驚き、そしていつしか見たあの竜が彼であることを悟った。
はじめは優しい人間だと思っていた彼にさえ恐怖を覚えていたのに、今の私は。
本当の彼の姿を知ってもなお、彼と離れたくない。
次の日、ドラゴン姿の彼は、私が目の前にいるのを見て目が飛び出そうなほど驚いていたが、そのあとの私たちはもっと…お互いに素直になれた気がする。
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次々と廃れた町に息吹を吹き込む、二人ずれの噂は、とうとう姫と竜人が旅をしているという真実へと辿り着き、王国、貴族、商人たちの取り合いに発展した。
そんな様子に辟易した二人は大陸を横断し、海を越え、新しい土地に降り立つ。
その場所は、二人が出会った深い森に似た森に覆われた場所だった。
二人はそこで結ばれ、小さな王国を作った。
その国の名は「ラティス」という。
-THE END-
もしもし、それこの王国の名前じゃないですか!
なに?
これ建国史だったの?
こ、こここここれが?!!!!
(→サイレントボイス:こんなのが…)
それにお母様、冷静に言わせていただきますが全然恋愛のレッスンに向いている内容とは思えません。まず、彼氏ポジションの人の疲れ、やつれに倒れるまで気づかないって…それでもヒロインいいのかい?!!それにドラゴンに体力で勝っちゃうって…。まあ、ヒロインはブラック就職済み者だから経験値が違うか…。
お母様、恋愛の足しには全くなりませんでしたが、転生者が過去にいたことは収穫でした。
安心してください、お母様。
こんなスローで鈍感ヒロインの恋愛の進め方なんて、私は致しませんよ。
(→警告:冷静に分析するという目的を失わないでください。)
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