第16話:冷静に出会ってしまう




「ファイ!!!!!よくぞ来てくれた!!!」




「おぉ、ジュノー!しばらく見ない間に大きくなったな!結構結構!」




なんだ、なんだ?二人は知り合いだったのですか?




「ファイ!!君はなんて神々しいんだ!気高く、美しく、絶対的覇者の風格!!

あぁ、なんて、なんてすばらしい!!!」




王子?なんかキャラが変わってるよ?確か腹黒ステイタスだったんだよ!

それに褒め方が絶妙に変。神々しい、美しい、は置いといて、絶対的覇者って

…笑




「おうおう、ジュノーも相変わらず元気そうでよかった!あっ、そうだ。ジュノーに新しい友達を紹介する。彼女はアティス。よろしくな!」




やっと王子が私の存在に気付いた。いくらファイが超絶覇者だからって私のこと忘れないでよね。




「あ!君はあの時の子か!!ファイ、僕は彼女のこと前々から知ってるよ!そうか二人は友達だったのか…よし、アティス嬢、私たちも友達になろう!」





え、えええええ???!





「そして、ファイを見つけたら、なにがあっても私に速攻教えてくれ。頼んだよ!!」




「え、ええ。」




なんだそういうことか。

王子はファイが大大大好きなのね、その架け橋に私が慣れと‥御命令に従います‥。




「そうか!よかったな、アティス!新しい友達ができて!そうだ、ジュノー、二人とも友になったのだし、一ヶ月後の飛行祭にアティスも参加させていいか?」



「もちろん!構わないよ。」







こうして私はめでたく飛行祭に参加することになった。

んだけど…、A I(転生前アティス)!そもそも飛行祭ってなんなの?




(→解説:飛行祭とは、10年に一度、竜人様を王宮にお招きし、国家安泰、豊作祈願のために王宮の周りを十周、そして王国を一周してもらうお祭りです。そこには、神官長をはじめとする神官、隣国の王族といった少数の客人を招いて執り行います。)




そんなすごい行事あったんだ。10年に一度だし、私今まで知らなくても当然よね。




「それならよかった!さぁ用事は済んだしアティスはおかえり!」




すると、また扉が開く、そこにいたのは。




「あ!ねえさん!なんでこんなところに姉さんがいるの?それに王子まで…。さあ、姉さん帰るよ、こんなところに長居するもんじゃない。」




おお、二度あることは三度あるとはよく言ったもんだ。

義弟よ、君は本当に空気の読める男だね、ナイスタイミング…。




こうしてジェイと私はこの場を去った。






「お、そおいえばジュノー、君はアティスを初めてみた時どう思った?」




ファイは少しいたずらな目でジュノーを見て言った。




「そうですね…ちょっぴり怖いけどキレイな令嬢かな?アッ、でも綺麗って言ってもファイには比べ物にならないけどね!」




「ははは!そうかい、そうかい。」





「あのう…先ほどからここどこだと思ってるんですか??研究の邪魔ですってば。」






*****





私とジェイが家に戻ったのは夕方だった。城を後にしたのはお昼頃だったというのにだ。




(→解説:王都中が、竜人様のご訪問の知らせに歓喜し皆仕事を休み祝っていたからです。)




おかげさまで馬車は全然進まず、飛んだ目にあった。

そして、馬車の中でとんでもないことを見落としていることに気づいた、いや気づかされてしまったのだった。




「ねえ、姉さんはいつから竜人様と知り合いなの?っていうか、どこであったの?」




「へっ??」




「とぼけないでよ、ファイ様のこと。もしかして、ファイ様が竜人様って知らなかったの?」




私はびっくりして数秒カチコチに固まっていたが、ゆっくり正気を戻した。




私は観念してジェイにほとんどをを打ち明けた。




妹の実験が気がかりで図書室にいたこと、そしたらファイ様が急に現れ、ドリス様を紹介してくれたこと。ドリス様が花の実験を手伝ってくださること、あとは見た通りだと伝える。ただし、秘密と言われたのでよくファイ様が図書室に来ていることは伏せておいた。あくまで、たまたま現れたと…




「いいなー姉様は。飛行祭って、本当は貴族すら入れない神聖な祭なんだよ。と同時に、我がラティス王国は建国神話同様、竜人様の擁護下にあると他国に示す重要な儀式でもある。いいなー近くでドラゴンを僕も見てみたい‥」




かわいいなと思った。

ジェイが始めて見せた子供っぽい一面。よし!毎度毎度、ピンチな時に現れてくれる、姉孝行な弟のために一肌脱いであげましょうか。




「そんなにいうなら、ファイ様に私から頼んで差し上げましょうか?ファイ様とは知り合ったばかりですが、なんというか、些細なことは気になさらなそうな性格ですので、きっとジェイ一人増えても了承してくださると思いますよ!」




「ねえ様‥相変わらず刺のある言い方…」






***





私はその日の夜、月光浴を兼ねて図書室に来ていた。

図書室には大きなこれまた楕円の天窓があって、そこからしんしんと月明かり降り注いでいた。





今日はいろいろあったな…。





ファイ様は竜人だったんだ…。

ファンタジーの世界のファンタジーの中にしか存在しないと思っていた竜人が、まさか本当にいたなんて…。

確かに、ドラゴン大好き王子じゃないけど、神々しくて覇者の風格がある人なのかもしれない…でも少し親しみやすいところもあって…また、あってみたいな…それに、ジェイだけじゃなくて、ファンタジー大好きなお母様や、アンジュにだって竜人様を紹介したいな…

時々ここに来られるって言ってたし、また会えたらこのこと頼んでみようっと。




天窓を見上げ、私は遥か先にあるはずなのに手の届きそうな月をただじっと見つめていた。










そんな彼女を物陰から見つめているものがいた。



久々登場…!!

それは、アメ役侍女、エレーナだった。



「ファイ様…あなた様は一体何を考えていらっしゃるのですか…」









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