第9話:冷静に新メンバーにお目通りする
例のお茶会が、あと三日に迫ったある日。
私の家に新しい家族がやってきた。
車椅子に乗った清楚な少女。
中庭をどこか遠い目で見つめる彼女の体をそよ風がそっと撫でる。
お母様も乙女的見た目をしているが、この少女は、か弱そうで、誰しもが守ってあげたいと自然に思ってしまうような乙女だった。
私が少女に見惚れいていると、はっとこちらに気づいた彼女は、私に向かってペコっとお辞儀をした。彼女からさらりと美しい白銀の髪が流れる。
ひょいとあげた顔は、薄ら痩せこけていて、私を覗くルビーのような瞳は…なぜか焦っているようにも見える。
「お、おおお姉さま。お、お初にお目にかかります、妹のアンジュにご、ございます。」
(→挨拶:はじめまして。あなたの姉アティスです。どうぞよろしく。)
ちょうどいいところにA I(転生前アティス)!!
アンジュの情報ファイルをくださいな!
[情報ファイル]
名前:アンジュ
年齢:8歳
ルックス:白銀の髪にルビーの瞳
ステイタス:ヒロインサポーター枠
好きなもの:寝ること
嫌いなもの:療養所
・
・
アンジュは一つ違いの妹で、生まれた時から体が弱く、すぐに公爵家から療養所にうつされ、この家では数えるほどしか見かけていない。しかも毎回会う前に彼女は就寝してしまうので、今回私はアンジュの姿を初めて見たと言ってもいいだろう。ちなみに彼女がやって来たその療養施設は、我が公爵家が管理している最先端技術を備えた場所だそうだ。
「あ、ああああのう…」
そういえばA Iが勝手に脳内挨拶してくれてたから忘れてたけど、ちゃんと生身の状態で挨拶してないんだった…と思っているところに、お父様とジェイがアンジュを迎えにやってきた。
**
二人は私とアンジュを交互に見た。
突然、お父様が急に睨みをきかせてくる。
「アティス、アンジュに何かしていないだろうな」
そんなわけないじゃん!!ひどい、お父様!
悪役令嬢?の補正なのかわからないけどすぐアティスは誤解されちゃうのね。
大丈夫そんなことしないから!
「いいえ、なにも。それよりアンジュ、挨拶遅くなり大変申し訳ありませんでした。こんなにも私の妹は美しいのかと少し見惚れてしまっていましたのよ。あなたとは長い間共に過ごせなかった分、これからは姉として力になりたいと思っているわ。何かあったらなんでも私に言ってちょうだい。そして、どうぞ、よろしく。」
アンジュは口をぽかんと開けたまま私を見上げ固まっている。
少しお間抜けさんな妹の表情がまた可愛い。
お父様もジェイも一瞬驚いていたようだけど、お父様は場が悪いと思ったのか、
「さあ、行くぞ。セバス、アンジュをまず応接間に通せ。」
「かしこまりました。」
と言ってその場を去っていった。
そうそう、だいたい筆頭執事の名前は「セバス」で決まりよね。
ジェイもその後に続くが、その間際に
「お父様に勘違いされるところは…相変わらずですね。」
と嫌味を耳打ちされるのだった。
***
応接間に移動すると、お父様、お母様、そしてジェイが、既に打ち解けたのかアンジュと親しげに談笑していた。
はたから見ると、私よりアンジュといる時の方が本当の家族みたいに見えるんじゃないだろうか…そう、一人でしょんぼりしていると、
(→警告:冷静になりましょう。アンジェはずっと家族と離れて生活していました。寂しい思いをしていたことは、この私でさえわかります。両親が優しく接してあげたいと思うのは当然です。)
A I…私の心のフォローまでしてくれるなんて…大好き!
(→!?!)
「アティスちゃん!これで家族全員揃ったのね!夢みたいだわ!やっと我が家の本スタートが切れるのよ!!」
その後、家族水いらずでお茶会をすることになった。
お父様は普段家にはいない時間帯だが、今日は特別らしい。
意外に家族思いなところあるじゃん。
基本、アンジュが中心になるようにお母様が話題を振り、会話が進む。
さすが社交界の華と呼ばれたお母様…!!
どうやらアンジュの話を聞いていると、療養所に年近い子はおらず、一人で毎日中庭を眺めるか、読書をするか、寝るか、という生活を送っていたらしい。
「あら!読書が好きなのね!!私もそうなのよ〜!!どんな本を読んでいたの?」
「そうですね…竜人様とお姫様の…」
「偶然!!私もそのお話が大好きなのよ!娘と気が合いそうだわ!!体が軽い時にぜひ私のお部屋にいらっしゃい!!あなたの好きそうな本がたくさんあるから!!」
「ぜ、ぜひ!!!うれしい…!お母様!!」
そ、それそんなに面白い話かな…。あの話、正確に、そして現代風に名前つけるなら、
(→タイトル:転生したら私がお姫様?!
〜えっ?まさかの婚約??そんなの聞いてないんですけど…気づいたら竜人と気ままに建国してた〜)
そ、それ!そんな感じ!よくわかっていますね、A Iは。
「ところで、アティスちゃん!あなた、3日後のお茶会に参加するんですって?あんなに断っていたのに…あなたが成長してくれてお母様は嬉しいわ!!そこでね、アティスちゃんも初めてだし、アンジュちゃんも初めてってことで、二人で参加してほしいのよ!!」
えっ?
私には、ヒロインとお近づきになる作戦があるのに…大丈夫かな。
私が、少し驚いた顔をしていたのを見られてしまったのか、急にアンジュがショボンとした。
「あ、あのう…私のようなものと一緒にお茶会に参加されては…お姉さまに失礼ではありませんか…」
「なに?私のようなもの…やはり、アンジュに何か言ったのか?」
「あなたは少し冷静になってくださいまし!アティスちゃんは見かけは少し怖いかもしれませんが中身はとてもいい子なのですよ!!」
お母様、私を庇ってくれてありがとう、そして見た目は怖いに若干傷ついています…。
(→警告:感傷に浸っている場合ではありません。早く返事をしてください。)
「もちろんですとも。私は見た目はたとえ悪役にしか見えなかろうと、こんな可愛い妹に嫌がらせをするような令嬢ではありませんわ!お茶会はぜひとも二人で参加いたしましょう!!」
言っちゃったー!!勢いに任せて…。
なんとか計画成功できるように頑張ります。
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