第37話:冷静にババ抜き
「アティス、いやエフィスと言ったほうがいいのか…ややこしいな、お嬢ちゃんは…。俺のことを覚えているか?以前、川で偶然会った。」
「はい、先日はありがとうございました。覚えております。」
「そうか。あの時に振り回せれていると嘆いていた男がファイとは…それは大変だったな。ファイよ、お前も罪の男だ。小さな嬢ちゃんを悩ませるのがお前の特技か?」
「し、失敬な!!私は…確かに振り回してしまう傾向にはありますが…」
「ファイのせいで、俺の婚約者が今までちっとも俺に振り向きもしなかったんだ。今度たっぷり礼を言ってやる!」
「ん??皐月のことか。それは、あなた様に魅力がないだけで私のせいではありません。」
「まあ良い。
それよりもアティスそしてエフィス、あんたらのおかげで皐月が前より明るくなってな。
俺の方もちゃんと見てくれるようになった。竜の姿になれたのも、嬢ちゃんのおかげっていうし、礼を言う、ありがとう。」
皐月様が言っていた王子って、この方だったのね。
川で子供や私を助けてくれたしきっといい人に違いない。
この人になら皐月様を任せても大丈夫そうだわ…
でも一つ気になっていることがあった。
皐月様が私を庇うために竜の姿になられたということは、その分、竜として人間に狙われる確率も上がってしまうのではないかということだった。
「皐月の心配をしているのか?それなら心配無用だ。
皐月もやっと覚悟を決めて王居に来ることを決めたからな、これからは俺が皐月を守る。安心しろ。」
それならよかった…私は胸を撫で下ろした。
なんだか王子が来てくれたおかげで空気が軽くなったな。
話を逸らしてもらえたみたいだし。
「アクエス、ファイそうしてエフィス。
お前たちのことはある程度知っている。互いに納得はできないだろう。
しかし、お前たちにはやるべきことがあるのではないか?
それは、スフェナの意思を尊重すること、そしてこれから3人が前を向いて生きられるように協力していくこと。そうであろう?
過ちをいくら後悔してもスフェナは戻ってこない。
たとえ悲しい末路でも、スフェナがもう一度引き合わせてくれたのだ、お前たちを。そのことを胸に刻め。」
殿下の言葉にずっと俯いたままであったアクエスが顔をあげた。
「おっしゃる通りでございます。このアクエス、前を向いて生きることなど叶わないと思っておりました。しかし、まだ私には少しではありますが寿命がございます。スフェナやファイ、そして再開できたエフィスのため、彼らの幸せのためだけにこの命を捧げてまいります。」
王子はゆっくり頷くと、急に真っ黒な烏に身を変え飛び立ち、私たちはその様子を見えなくなるまで見送った。
「ファイ、エフィス。私の行動は、あの魔術師に知られる可能性が高い。ともに行動することでまた巻き込んでしまうかもしれぬ。故に、私は遠くからそなたらを見守る。エフィス、そなたの口から、会えてうれしいと聞けてよかった。ありがとう。」
そういうと、アクエスは身を白銀の鳥へと変え、頭上を三周すると空の彼方へと消えた。
***
「さーてと!美琴。私も前向きに生きるためにこれから努力しようと思うのだよ。」
急にファイ様が明るいこえで溌剌と話し始めた。
「エフィスから聞いた、美琴や転生者たちの話、乙女ゲームの世界というものも。ババ抜きゲームなんだって?それも笑私は美琴に協力する。支配人を君たちと共闘して見つけ出し、ヒロインとエフィスの幸せも見届けよう。
そして、私は方法を見つけたい。美琴とおババさま抜きで会える方法を!!!」
彼は眩しすぎる笑みを私たちに向けてきた。
「ちょっ!ファイ様。ババ抜きと、ダジャレでからかって‥抜かれるババの身にもなってください…!寂しいです。」
「ははは!!!愉快愉快!!」
こうして私は、私たちは分かり合った。
私はThe joker is next to youの世界で、心の友ができて、大切に思える仲間ができて‥今幸せだ。
****
そんな私たちの様子を遠くで伺う者がいた。
「おかしいな〜。
アクエスの悪事をエフィスとファイが知れば、二人の関係は二度と修復されないっていうシナリオのはずなのに…。
まあ、いいか。
これから魔法学園入学だ。乙女ゲームの本当の世界はまだ始まったばかりなんだから。」
*****
これから私たちの本当の戦いが始まる。
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