第12話:冷静に宰相息子ルートを振り返ってみる



ヒロイン、クシュナは約束そうそう、本日我が公爵家に遊びにくる予定だ。

AIは、クシュナの兄に当たるジュリアスが来ないことを手紙で確認すると少し安心していた気がする。


クシュナが来る前に、数少ない私が経験したルートである宰相の次男坊〜ジャミン編〜のおさらいとでも行きますか!


(→[情報ファイル]の開示)



[情報ファィル]




名前:ジャミン

年齢:10歳

ルックス:漆黒の髪に水晶のような瞳

ステイタス:ツンデレに見せかけてガラスハート。コンプレックス持ち

好きなもの:兄上

嫌いなもの:父上・兄上



いつ見ても残念なステイタスだな。



私は転生前、冷静に判断してくれるような、頭脳明晰男性がタイプだったため、最初は宰相の息子、頭脳役ポジションのジャミンから攻略を始めていた。ジャミンといろいろ会話して、ジャッジメントである悪役令嬢10歳の誕生日パーティーで、ジャミンにエスコートを頼んだのだが‥残念なことにババその回はジャミンを引いてしまったため、1回戦敗北、退場させられてしまった。




それでは、一発K Oのシーンをもう一度振り返ってみよう。




<<舞踏会の会場から抜け出し、噴水の前に腰掛け、手を取り合うヒロインとジャミン。>>



ジ:「お、俺は。兄さんに負けたくなかった。なにか、なにか一つでも兄さんに勝てる何かが俺にあればって…。そんな時に、クシュナ。君が僕の手をとり、励ましてくれた。きっと兄さんよりも強くなれるって…それでね…」



満月が雲にかくれ、あたり一面、急に暗くなる。



彼の水晶の瞳がギラギラと光り始めていた。



ジ:「俺は強くなるために…いや…それがね、強くなったんだ!!俺はそれはもう強い!!!!ほら、こんなに俺の魔力が漲っている…!!ハハハハハハハ!!!!」



ジャミンの狂気的な変容に戸惑い、思わず手をふり離してしまうヒロイン。



そこにジャミンの兄が現れる。



「やめろ。ジャミン…お前、まだそんなことを続けていたのか…ジャミン、そんなに焦らなくていいから‥」



ジ:「そんなこと?兄さんはなんでもそんなことって…。どうせ、いつも俺に優しくしていると見せかけて、実は陰で俺の悪口を言っているんだろう?俺がせっかく強くなったのに素直に褒めてもくれないのか…!」



「違う。僕はジャミンが好きだし、ジャミンの頑張っている姿にはいつも尊敬していたよ。でも、今の君のやり方は間違っている。ジャミンが飲んでいるその薬は、魔力量を一時的に急激にあげる代わりに精神と寿命を対価とする危険な薬なんだ。摂取量も多いし頻度も高い…そのままではジャミン、君が壊れてしまう。」



ジ:「知ってるよ。俺はもう…壊れかけてるし壊れていいんだ…ハハハハっ!!だって、クシュナ…君は強い男に憧れているって言ったよねぇ??さあ、兄さん。俺と勝負だ。今なら絶対に負けないよ。」



彼の瞳が一層ギラつく。



「僕は、弟と戦う気はない。ジャミン。そんな無駄な争いはやめてくれ…」



急にジャミンが下を向き狼狽をはじめた。肩も膝もガク開くと震え明らかに以前とは様子が違う。



ジ:「俺がすることにいちいち価値をつけるなーーー。もとをただせば、お前、クシュナが悪いんだ。俺に…強い男に価値なんかつけやがって…」



そして薄気味悪い笑みを浮かべると、急に蛍光緑のぬるっとした光が彼から放射状に吹き出したところで、画面がフェードアウトしていく…。




最後に、you chose the joker.と書かれた怪しげな封筒が開かれておしまい‥。






改めて、冷静にあの状況を思い出すと…

つまりヒロインは「あなたはお兄様より強くなれるはずよ!きっと…」の選択肢を選んでしまうと、ジャミンによる逆恨み?か事故?に巻き込まれ、ゲームオーバーになってしまうってことよね…。




勇気付ける選択肢が彼をジョーカーにさせる引き金って…




(→労い:回想シーンお疲れ様でした。あまりに必死になって気付いていないようでしたが、ヒロインが部屋に入室し、エレーナから紅茶とお菓子をもらって、先ほどからあなたをじろじろと観察しています。)




ゲッ!それならA I様教えてくださいよ…




(→助言:もう一つ教えてあげます。最後の「勇気付ける選択肢が彼をジョーカーにさせる引き金って…」は声として発生されていましたのでご注意を。)







「あのう…大丈夫ですか?アティス様??先ほどから何回もお呼びしているのですけど‥」




「は、はい!ゴメンなさい…少し思い出しごとしていたら、私ったら周囲のことにまるで気づいていなかったようで‥」




「あぁ。最後の『ヒロバカ』の話ですか。やっぱりあなた転生者ね。」




「えっなに?ヒロバカ?」




「あら?もしかしてこの用語知らない?まあコアなゲームファンの中での言い回しだから、こちらサイドではなかったってことか。ゲームオーバーのことをヒロイン婆化、略してヒロバカになったの笑」




「へっ、へぇー。(そこはスルーしとこう)

…ところであのう、ということはクシュナさんはゲーム全クリしているのでしょうか?」




「全クリかは覚えていないけど、さっきあなたが口走っていたルートは知っているわ、ジュリアス初期ルートね。あいつはほんとに捻くれすぎだわ。扱いに困る。無用に励ましすぎるとヒロバカなんて。あなたこそ、全クリしているの?」




「私は、そのジュリアス初期ルートしかやっていないうちにこちらにきてしまいまして…」




「あら。そうだったの…。ただでさえ悪役令嬢として転生してしまったのに。かわいそうだわ。そうよ、何か聞きたいことがあったら言ってくださいな!力になるわ。」




うん??悪役令嬢として生まれたのがかわいそうだって…?ムムム‥




(→警告:冷静になってください。せっかく仲良くなられたのですから…)




「今、悪役令嬢に転生したのはかわいそうって言いましたか?あなたは悪役令嬢がそういえばお嫌いでしたのよね?なぜかしら?」




(→恐れていた展開に…)


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