第4話:冷静に分析したい
今日のお月様は満月だった。
雲ひとつなく、とっても大きなお月様に照らされて、私の陶器のような真っ白な素肌が、キラキラとした。月明かりに包まれるとまるで、水を得た魚のように体が軽くなり、何やら懐かしい気持ちになった。
「あぁ、これ温泉に長時間入った後にそよ風で夕涼みしている時の感覚だ・・・」
なんてつぶやき、目を細めて満月を見ていた。
(→注意喚起:自分が乙女ゲーム世界に参加していることを思い出しましょう。攻略対象はすぐ側にいます。)
その後すぐに私に、攻略対象の一人である義弟の情報が流れ込んだ。
[情報ファイル]
名前:ジェイ
年齢:8歳
ルックス:グレーアッシュの髪の毛に、ルビーのような瞳
ステイタス:ヤンデレ枠
好きなもの:姉
嫌いなもの:姉
・
・
・
その後、転生前のアティスから見たジェイとの記憶が走馬灯のように流れてきた。いつもアティスにいろいろ突っかかって絡んでくるのだがアティスに全て無視されていた。だから会話も続いたことは全くなさそうだ・・・。アティス、結構、いやちょー冷めていらっしゃる・・・。
転生前に、攻略対象の一人として、悪役令嬢の義弟がいたのは知っていたが、そのルートはやったことがなく、あまり詳細は知らなかったので、情報ファイルの存在はありがたい。
あ、そういえば(→)さん、回復したみたいだし、一回なんなのか確かめてみたかったんだよね。
私は、頭の中に向かって話しかけてみた。
(←件名:はじめまして)
(→)様
はじめまして。
私は、日本という国からきた転生者です。
以前、悪役令嬢もののお話にハマっておりまして
たくさん読んできました。乙女ゲームはそれ以前には
したことはなく、小説から入って初めてやったのが
この、ジョカ横になります。ルートは、宰相の息子で
ある、ジャミンルートしかやったことはありません。
ちなみにその時はジョーカーはジャミン様でした・・。
初心者で大変恐縮ですがよろしくお願いします。
ところで、今回、こうしてメール差し上げましたのは、
(→)様、あなた様のことについてお伺いしたかった
からでございます。単刀直入にお伺いいたしますが、
貴方様は、どう言った方でございますでしょうか。
お気に障らない程度で構いませんので、よろしければ
ご返信願えますでしょうか。よろしくお願いいたします。
転生者
これでよし!と。送信を押した。現代日本で手に入れたメール差し上げスキルできっと(→)さんには失礼のないような関係が築けるはず!
(→懇願:メールのやり取り方式はやめてください。めんどくさくてこちらとしては受け答えに困ります。貴方が礼儀正しく私と仲良くなりたいことはわかりました。貴方の考えは私には筒抜けですので、このようにする必要はありません。私のことに関してですが、まず貴方の情報ファイルを確認してください。)
[情報ファイル]
名前:アティス(転生前)
年齢:9歳
ルックス:青味がかった白銀の髪、アメジストの瞳
ステイタス:※▲◉
好きなもの:なし
嫌いなもの:なし
・ なし
・ なし
名前:アティス(転生者入り)
年齢:9歳(今年10歳)
ステイタス:二重人格+※▲◉
好きなもの:悪役令嬢もの
嫌いなもの:トイレ掃除を含む全ての掃除
・
・
ステイタス:二重人格?
ステイタス:悪役令嬢ではなくて??
つまり、(→)さんは二重人格のもう一つの性格の私ってことでいいのかしら?でも、こう、二重人格だったら、今日はA子、急にB子みたいに制御がつかないっていうか、入れ替わり激しいものではないのか・・・。私の場合、転生者である私の意識がほとんどで時々、(→)さんがツッコミというか、導いてくれてるというか・・・なんだけども。
というか、私よりも、(→)さんの方が人工知能、A Iのように冷静で・・・?
(→)さんのことはこれから、A Iさんとお呼びしよう!それでいいですか?
(→承諾)
ところで・・・A Iさん?
貴方は、以前のアティスとジェイの記憶を知っていましたね。
それに、以前の私は、笑顔をあまり見せたことすらなかったと。
証拠に侍女のエレーナは、それだけで私が感情的になったと言いました。
さらに情報ファイルを見る限り、以前の私はほとんどの物事に無関心。
A Iさん、その喋り方と言い、冷静さと言い、ひっかかります。
貴方は、もしかして転生前アティスではありませんか?
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