第29話:冷静に自覚して



冷静に自覚して三日たった。



私はファイ様が好きなのだ…。久々に思い出す誰かを好きという感情。

自覚してから彼のことばかり意識してしまって、自分が自分でない気がする。



(→他人の恋路に水を刺すつもりはありませんが、恋愛感情をこんなに間近で冷静に受け止められる日が来るとは思いませんでした。あと御免なさいね、美琴のプライベートを覗き見しているみたいで…)



とかエフィス言ってくるし。

そうだ!エフィス、君が私の歯止めになって、ファイ様へのこの感情を打破してくれないか?

私の心だけでは押さえ切れそうにないんだ…一生のお願い!エフィス〜!!



(→もう、仕方ありませんね。解決策として一つ提案します。

あなたがファイ様のことしか考えられなくなったり、ファイ様といて思考停止になりそうになったら私が代わって、冷静になったところであなたにバトンタッチ。こういう流れでよろしくて?)



エフィス様〜最高です。それでいきましょう。



(→それでは私と切り替わりましょう。一回冷静になってきてください。)




・主要モード、美琴からエフィスにロード中・・・もうしばらくお待ちください




はい。

入れ替われました、エフィスです。

では今から、ファイ様のお母様についての情報、並びに夫アクエスの情報収集計画についての思考を開始します。


ファイ様のお母様については、ファイ様に聞くのが一番ではありますが、私が何度も美琴と変わると、ファイ様に説明がつきませんので、今は得策ではないかと。

そこで代案として国立図書館に行き、過去の死亡事故を調査し記事を見つけることを提案します。

以上です。意義ありますか。



(→ないでーす!)



それでは図書館に参りましょう。




私は、ダンテさんに図書館へ行くことを伝え、地図を頂き、市中を目指しました。

図書館の目の前に着くと、その建物一面に描かれた月人と竜の巨大彫刻に圧倒されました。すごいです。



(→主要モードがエフィスに変わってから描写が短調だよー。すごいです以外の表現はないの?エフィス〜)



無視します。

図書館に入ります。



まずは館内地図を見つけて、分野を絞って。ここね。



あった。



ページを開く。



****


タイトル


貴婦人白竜が人間に襲われる。



昨夜、我が国と人間界の狭間の森にて、白竜が殺された。

白竜は、代々王族関係者とあって我が国は一時混乱した。

白竜は竜人の中でも特に魔力量の高い一族で、遺体のほとんどが人の手に渡ってしまったことは我が国にとっても大変な痛手であり惨事である。

白竜の貴婦人の名はスフェナ・ハトファル。ハトファル家当主の妻だった。


月影新聞より



****



次の方向性が決まりました。

ハトファル家について調べます。



見つけました。



(→エフィス、早くない??天才?)




***



ハトファル家



代々白竜のみ生まれる血族。

王族関係者。

ハトファル家の血は、一滴でもその身に流れていれば、皆、白銀の容姿になるという。

魔力反応が特に強い特徴がある。

ハトファル家は、人も竜人も頑なに拒み、その多くが謎に包まれている。



主要な血縁者:霧月国王家、アクエス・ハトファル並びにラティス国貴族ハーベル家・・・・・




えっ!アクエス!!アクエスのことが書いてあります!!!美琴、アクエスですよ!アクエス!!!!




(→落ち着いて、エフィス。そうだね、アクエスだ〜あはは。それにハーベル家には白竜の血が流れているからみんな白銀なんだね〜ヘェ〜すごいね〜あはは)



アクエス!!ああ!私たちの髪色も白竜の血が混じっているからなのですね!

アクエスとお揃いなのはちゃんと意味がありましたのね!!

アクエスにぜひお知らせしたいですわ!アクエス!!!



(→あのう、エフィス?そろそろ代わろうか?)




・主要モード、エフィスから美琴にロード中・・・もうしばらくお待ちください




はい、ロード完了しました。私は美琴です。

エフィスが言ってた、他人の恋愛感情を完全共有してしまう恐怖が体験してみてようやく分かったよ。すまなかった、エフィス。


あとは任せて!

このハトファル家周辺に行ってご近所さんたちから情報を聞き出すぞ!おー!



(→アクエス!!!!待ってて)



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る