第27話
リビングに降りると冬華とお母さん、小夏がすでにいたので僕はみんなに挨拶をしたあといつもとは違う席に座った。
「えっ?秋?そこの席」
びっくりしている小夏に
「だ、だめかな?となり」
すると慌てて首をブンブン横に振ったあと
「全然大丈夫!むしろうれしい!」
と笑顔で嬉しそうに言ってくる小夏に僕は、ありがと。といいながら席についた。このとき一度も冬華の方を見なかった。
その後朝食をたべてから学校の用意を済ませ僕は小夏の部屋をノックした。
「……小夏?俺だけど今ちょっといいかな?」
すると今まで僕から小夏に会いに行くことなんてなかったからものすごい部屋の中で慌ててものを片す音が聞こえたあと
「…………ど、どうぞ」
「あ、ありがと」
記憶喪失になってから初めて小夏の部屋に入った。思ったより女のコの部屋って感じだ。小夏はあたりをキョロキョロしたあと
「ど、とうしたの?こんなこと今までなかったじゃん。」
僕はこれから本気のお芝居をする。大丈夫。僕が好きなのは冬華だけ。それさえわかっていれば大丈夫だろう。僕は少し息を吐いたあと
「………小夏に伝えたいことがあるから今日の昼休憩、いつもの場所で待ってる。それだけだから。じゃあ」
言いたいことだけいって部屋をあとにした。必ずやり遂げてやる。
それから学校につき、今日は鈴音は休みみたいだ。これは好都合かもしれない。鈴音には明日話をしよう。
その後あまり授業が入ってこない時間を過ごしたあといよいよ僕の、僕達の幸せのための第一歩が始まる。僕は先に科学準備室に入り小夏を待った。
しばらくして小夏がやってきた。どこかソワソワしてる様子だったので僕から話かけた。
「ごめん、朝はいきなり部屋に入って。」
「い、いや。平気だよ!それよりも今日はいつもとなんか変だよ?どうしたの?なんか話があるみたいなこと言ってたし、とりあえず時間もなくなるしセックスしたあとにする?」
しっかり演じろよ、相葉秋!
「………もう、こういうのやめにしないか?」
「えっ?」
小夏は僕が何を言ってるのか理解ができてない様子だったので
「こういう約束だからってセックスするのはもうやめにしたい。」
すると理解できたのか小夏が
「は?いいの?約束破ったら私達の関係、冬華ちゃんにいっちゃうよ?それは嫌だから今まで関係をもってたんじゃないの?」
よし!ここだ。
「……だから、約束でするのが嫌なんだ。俺はちゃんと小夏と愛し合いたいんだ。」
小夏は目を見開いて口を開いたまましばらくフリーズしていたが
「…………へっ!?どどということ?」
「……だから、俺は小夏を一人の女として愛してるってことだ。」
「えっ!えっ?だって秋は冬華ちゃんが好きなんじゃないの?だからこういう関係になったんじゃないの?」
混乱してよくわかってない小夏に僕は
「最初は冬華さんに言わないでもらうためにシテた。でも小夏と何回も肌を合わせて俺の中で小夏がどんどん大きくなっていったんだ。最初は仕方なくだったけど次第に俺から求めるようになった。そのときには冬華さんの事はもう頭には入ってなかったんだ。」
自分で言って胸が苦しい。でも我慢だ。これはお芝居。大丈夫。
「俺は気付いたら小夏を好きになってた。だからこんな関係はやめにして………俺と付き合って恋人になってほしい。」
僕の告白を受けて小夏は最初こそ戸惑っていたが徐々に嬉しさで感情が高まり涙を流しながら僕に抱きついた。
「………うれしい。こんな日が来るなんて思っても見なかったから!私は二番でも良かった。秋の側に入れるなら。でも本心では私だけをみてほしかった!だからうれしい。ありがと秋」
小夏にここまで言われたというのに僕の心は全く動かない。よし、ちゃんと芝居ができてる。あと少し。
「俺も嬉しいよ。……でも俺たちは双子で血の繋がった兄妹。だから公の場で堂々とイチャつけないし、ましてや恋人なんて名乗れない。」
小夏もそれは理解しているのか涙で濡れた顔で小さく頷く。
「それに………」
僕がそこで止めると小夏はすぐに反応し
「それに。どうしたの?秋」
「俺は小夏に話しておかないといけないことがあるんだ。」
そう言って鈴音の事をすべて小夏に話した。聞き終わった後小夏は
「そ、そうなんだ。私が言えた義理はないけど鈴音も大概イカれてるね。」
「でもそれを利用して逆に鈴音の弱みを俺たちが握ればもう俺たちを邪魔する人はいなくなる。だから」
小夏は利用?と首を傾げて僕の話の続きを待った。
「だから、俺は鈴音とフェイクの恋人関係になろうと思う。」
「フェイクの恋人?恋人のフリをするってこと?」
「ああ。そしたらスキが生まれて弱みを握れるかもだし何より俺たちの関係を疑われずに済む。……ただ小夏と違って俺と鈴音は恋人関係を隠す必要がない。だから鈴音とは学校でも外でもイチャつく必要があるんだ。そこはごめん。」
僕が嘘に嘘を重ねて演じながら謝ると
「うんう!大丈夫!私達の関係を守るためだもん!確かにかなり苦しいけど、でも我慢する!二人の幸せのためだもん」
「本当にごめんな。せっかく恋人になったのに今までと変わらず昼休みに会うくらいしか時間が作れなくて。でも安心してほしい。これからは愛し合ってセックスをしよう。しばらくは辛抱してそしたら二人でどこか二人だけになれるところにいこう!」
僕がそう言うと笑顔でうん!といい強く抱きついてきた。僕はそんな小夏の頭を優しく撫でながら
「だから二人で協力して鈴音を消そうな。そしたら邪魔をする人はいなくなるから」
すると小夏が
「うん!あ、でも冬華ちゃんは大丈夫なの?まだ秋の事好きなんじゃないの?」
「……大丈夫。返事は昨日したから。これからは兄妹として仲良くすることになったから。でも俺たちの関係を冬華さんに言うのはやめとこ?冬華さんも考える時間が必要だと思うから。俺たち双子にとって唯一の姉なんだから。これからも大事にしていこ」
「うん。私もまた仲良くできるように頑張る。」
そう言ってまた僕を抱きしめたので僕は小夏の唇にそっと口づけをした。
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