第8話

「お、おはよ。秋ちゃん。入ってもいいかな?」


今、一番顔を合わせるのが気まずい相手、冬華さん。とりあえずはなんとかして動揺を隠さなければ


「は、はい。どうぞ」


若干詰まったがそれには気づかず昨日のキスの件でか若干顔が赤い冬華さんが部屋に入ってきた。


「昨日言った秋ちゃんに好きになってもらおう作戦の一つとして朝起こしにきちゃいました!えへへ」


そんな事いってたかな?あっ、私しか見れなくするとかなんとかのやつだ。それよりも可愛いな。こんな人が僕の事を好いてくれていると思うと嬉しく思う。と同時に罪悪感でいっぱいだ。


「ま〜早く秋ちゃんの顔が見たくなっちゃったのが本音です!」


こんな人に好きになってもらってもいい人なのか?僕は。それでも、


「僕も朝から冬華さんの顔が見れて嬉しいです。さっ、朝ごはん食べにいきますか!」


僕は最低の人間だ。それでも冬華さんが笑顔になってくれるならそれでいい。小夏さんの事はまた後で考えればいい。今は目の前の人のことだけ考えよう。


冬華さんは顔を赤らめながら、うん!と言って一緒にリビングに向かった。そこにはすでに父は海外に行っておらず母と小夏さんがいた。


一瞬小夏さんと目があったがすぐに何事もなかったようにスマホを見出した。その後はいつものように朝食をたべ、今日から僕も久しぶりの登校だ。冬華さんが一緒に行きたいと言っていたが学校での手続きやらがあるので朝は母と一緒に行く事になった。


冬華さんはしょんぼりしていたが僕が、「なら、帰りは一緒に帰りましょう!」といったらすぐに笑顔になって頷き、学校に行った。


チラッと小夏さんに視線を送ると少しだけ口角が上がっていたような気がした。


その後で小夏さんも学校に向かい、僕は母と一緒に車で学校まで向かう。久しぶりの学校と言っても僕からしたら入学式とそう変わらない。


学校につき、母と一緒に職員室にいき母の言葉で担任の先生がこちらにきたのだが僕を見てそれから名前を確認したらものすごいびっくりしていた。


その後担任の先生に色々と事情を話し担任から改めてクラスのみんなに説明する事となった。母とはそこで別れ僕は担任と一緒にクラスに向かった。


「いやーそれにしても色々と驚かされたが何よりお前、そんな見た目してたのかー私があと10歳わかけりゃなー」


と場を和ますつもりで言ったのか冗談を言ったので僕も冗談で返した。


「いえいえ、先生はまだまだ十分若くて綺麗ですよ?僕の方が釣り合ってないくらいなので先生の恋人になれる人は羨ましいですね。」


するとなぜか少しだけ顔を赤らめた担任が「か、からかうなよ。」と言ってそれっきり黙り込んであっという間に教室の前にきていた。


さっきのを無しにするかのように一度咳払いをしてから「よし、行くぞ」と言って先生と一緒に教室に入った。


教室内は最初は騒がしかったが先生と僕が入ったら皆が一斉にぼくの方をみて小夏以外みな目を見開いていた。


先生が


「えーみんな静かに。ここにいるのは転校生でもなんでもない。名前は相葉秋。もともとうちのクラスの生徒だ。」


と言うと、誰?といった風に首を傾げてる人、マジかよ!と驚いてる人、小夏だけは笑顔だった。


「それとな、相葉は実は記憶喪失でな、まーなんだ、クラスメイトには違いないが同時に転校生みたいなものだからこれから改めて仲良くしてくれ。じゃあ改めて自己紹介しとくか。」


とふられたので僕はできるだけ印象よく笑顔で自己紹介をした。


「えーとみなさんの中には知ってる人もいるみたいですが僕自身皆さんのことは知らないので改めまして、始めまして相葉秋です。このクラスにいる相葉小夏の双子の兄で同じ名字がクラスに二人いたら何かとめんどくさいので気軽に秋と呼んでくれたら嬉しいです。よろしくお願いします。」


先生に席だが気軽に話せる兄妹のところにするかと言って僕は小夏の隣の席になった。


隣に腰掛けるやいなや小夏が


「よろしくね、秋。いろいろと、ね。」


と含みを持たせた言い方に対して僕は


「ああ、よろしく。」


と淡白に返した。これから僕は小夏とどう向き合っていくのか隣に視線を少し向けながら考える事にした。


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