第16話
私は11歳の時に新しい家族ができた。新しいお父さんと可愛い双子の兄妹。私は昔から人見知りする方だったためうまく馴染めるか不安だった。それでも今まで私を一人で育ててくれたお母さんに心配されたくないので積極的に新しい家族に馴染もうとした。
新しいお父さんはとてもいい人でお母さんも毎日とても笑顔だった。双子の兄妹は妹の方は最初凄い睨まれていたので不安だったが兄の方は凄く穏やかで優しかった。
私は同年代の男の子と仲良くしたことがなかった。理由はよくからかわれていたから。今思えばあれ好きの裏返しだとわかるが当時の私にはとても嫌な気持ちになった。そんなこともあり当時男の子が苦手だった。
そんな私は最初新しい弟、秋が苦手だった。でも話して見ると凄く優しくてクラスの男の子とは違った。それから私は秋ちゃんと仲良くなるのにそんな時間はかからなかった。
学校から帰ってきて今日あった事とかまた男の子にからかわれたなどの話をちゃんと聞いてくれてそれが嬉しくて話した後はいっぱい遊んだ。そのときにはもう少し家族愛とは違う好きな気持ちがあったのだろう。その時の私はよくわからなかった。
それからも秋ちゃんとは仲良くなりよく遊んだ。秋ちゃんと一緒にいるだけでとても嬉しかった。でもその一方で妹の小夏ちゃんとはなかなかうまく行かなかった。
小夏ちゃんは私と秋ちゃんが遊んでいると間に割って入って3人で遊ぶのではなくあくまで小夏は秋ちゃんと二人で遊びたいみたいだ。
私は小夏ちゃんとも遊びたいし仲良くなりたくて勇気を振り絞って声をかけた。
「こ、小夏ちゃん!私とも一緒に遊ぼ?」
すると小夏ちゃんが
「秋は!私だけのものなの!だからとっちゃ、や!やーー!」
どうやら小夏ちゃんは私に秋ちゃんお兄ちゃんを取られると思って私を避けていたみたいだった。私は小夏ちゃんを可愛いと思いながら
「大丈夫だよ?私は秋ちゃんを小夏ちゃんから取ったりしないからね?だから私ともあそんでくれないかな?」
そう言うと小夏ちゃんは本当?と聞いてきたのでうん!と返したら初めて小夏ちゃんが笑顔になり、わかった!約束ね!といってそこから3人仲良く遊ぶようになった。このときの私は小夏ちゃんがどういう意味で秋が私だけのものと言ったのかそこまで理解していなかった。そのせいで私は小夏ちゃんとの約束を破ることになる。
3人で遊ぶようになってからしばらく経ったある日家の近所に小夏ちゃんと秋ちゃんと同い年の女の子が引っ越して来た。名前は有馬鈴音ちゃん。とても可愛い娘ですぐに私達仲良くなった。
でもある日公園で遊んでるときに鈴音ちゃんが
「ねぇねぇ秋くん!大きくなったら私とけっこんしよー!」
と言ったのだ。それに対して秋ちゃんが
「え、うん!いいよー」
とあまり意味を理解していない感じで了承した。
この時小夏ちゃんが鈴音ちゃんに対して、そんなのだめー!と言ってるのを聞きながら私はなぜかとても胸のあたりがチクチクと痛んだ。
それから鈴音ちゃんは事あるごとに秋ちゃんをつれて遊びに行き、仲良くなっていた。秋ちゃんも私達に向けたことのない表情をしてるのを見るとさらに胸が痛んだ。なんだろ
小夏ちゃんは秋ちゃんに、もう鈴音とは遊んだらだめ!と言っていたが秋ちゃんはそれを聞かず遊びに行くものだから小夏ちゃんは、もう知らない!と言ってよくケンカをしていた。私もその頃にはあまり秋ちゃんが遊んでくれなくなり寂しかった。
そんなある日有馬家がまたどこかに引っ越しをすることが決まった。秋ちゃんは凄く悲しんでいたが小夏ちゃんはずっと笑顔で、私は表情こそ悲しんでいたが心では嬉しかった。
これでまた秋ちゃんと遊べる。そして鈴音ちゃんが引っ越してからしばらくは平和だった。昔に戻ったみたい。とても嬉しかった。だが中学に入ると
秋ちゃんがモテるようになった。それもそうか。秋ちゃんはとても顔がかっこいいし何より優しい。その頃から小夏ちゃんは秋ちゃんとほとんど口を聞かなくなり家でもずっと不機嫌だった。お母さんやたまに海外から帰ってくるお父さんは反抗期かなと笑っていたが私にはわかる。小夏ちゃんは嫉妬してたんだ。わかるよ、だって私もそうだったから
小夏ちゃんも学校ではかなりモテた。可愛いから。そして私もモテてたと思う。でも小夏ちゃんも私ももうすでに好きな人がいたからあまり相手にもしなかった。でも秋ちゃんは違う。家に帰ると今日は誰々から告白されたんだーとお母さんに嬉しそうに言ってるのを見て小夏ちゃんは不機嫌になり、私もモヤモヤすることが多くなった。
しかししばらくたったある日雨など降ってない晴れの日なのに秋ちゃんがビショビショになって帰って来た。どうしたの?と訪ねても、別に何もない。といって話してくれなかった。その後もどんどん秋ちゃんの元気がなくなりとても心配だった。
小夏ちゃんなら何か知ってるのかもしれないと思い聞くも「はぁ?知らないわよ!」といってすぐに部屋に戻ってしまった。私はどうしても気になり当時生徒会長をしていたのでいろいろと調べた。
するとどうやら秋ちゃんはある女の子に告白されたが断り、その断った女の子が腹いせにクラスの男の子を使って秋ちゃんをいじめていたのだ。
私は怒りでどうにかなってしまいそうになった。あんなに優しい秋ちゃんをいじめたやつが許せなかった。
秋ちゃんのいじめはエスカレートしていきとうとう秋ちゃんは学校を休みがちになった。私はいろいろと証拠を集め、それを先生に渡し、秋ちゃんをいじめていた人たちを排除した。そこからは秋ちゃんの傷ついた心をなんとか癒やしてあげたかった。
最初は話も聞いてくれなかったが根気強く何度も何度も話してる内に私にだけ心を開いてくれた。そのときは泣いちゃうくらい嬉しくて思わず秋ちゃんに抱きついてしまった。そんな私をみて少し笑いそっと自分の服の裾で私の涙を拭いてくれた。
そこから私は高校生になり秋ちゃんも同じ高校にいきたいと言ってくれたから嬉しくて勉強もよく見てあげた。たまに見る小夏ちゃんは私達をみて鋭い視線をむけるだけで話しかけては来なかった。多分羨ましいのだが今更どう接したらいいのかわからないんだろう。
この時には私は秋ちゃんのことを異性として好きになっていた。一度私は秋ちゃんに
「ねぇ秋ちゃん?私秋ちゃんの事好きだよ!」
と言ってみたことがあった。私は相当勇気をだしていってみたが
「うん!僕も冬華ねぇーさんのこと好きだよ!僕はいいねぇーさんに恵まれて幸せだよ」
と言ってくれたが私はショックだった。秋ちゃんの好きは家族として姉としてでしかなかった。この恋は一生叶わない。そのときに初めて思った。
………あっ、そうか。小夏ちゃんはずっと前からこの気持ちを知ってたんだ。家族だから好きになっても叶わない。血が繋がってるからなおさらだ。
私は正式には血は繋がってない。でも秋ちゃんの中では私はお姉ちゃんでしかないんだ。だから私はこの気持ちに蓋をした。今後秋ちゃん以上の人なんて現れない。でもこの気持ちを伝えて壊れるくらいならこのままでいい。そう思っていた。
でも高校生になった秋ちゃんは学校でまたいじめを受けた。中学よりも壮絶な。もう私でもどうすることもできない。そしたらある日秋ちゃんが久しぶりに部屋から出てリビングに顔を出した。
私はもちろん、お母さんもびっくりしていた。がよりびっくりしたのが秋ちゃんが記憶喪失になっていたことだ。最初はよく理解できなかったがどうやら本当に記憶喪失になったみたいだった。
私は秋ちゃんを救えなかった後悔よりもなぜか心が身体が喜びに溢れていた。私は最低な女だ。秋ちゃんが困っているのに私は、
私は記憶喪失がなくなったと言うことは私達が兄妹ということも覚えてない。ならいまなら姉としてではなく一人の女としてみてもらえるんじゃないか!そう思うとあの日蓋をした気持ちが止まらなくなってしまった!
記憶がないならもはや他人。しかも私は小夏ちゃんにはわるいけど血すら繋がってない。合法的に秋ちゃんと結ばれることができる。
私は今までの気持ちをすべて新しい秋ちゃんにぶつけた。そしてキスもした。報われたと思ったが私は本当に嫌な女だ。秋ちゃんは私のだという意思表示がしたくなりわざわざ小夏ちゃんの部屋に行き秋ちゃんに告白したことキスしたことすべて話した。小夏ちゃんは私をずるいと言った。
うん、私はずるい女だ。小夏ちゃんの憎みのこもった視線を浴びて部屋を出た。この時の私の顔は多分にやけていたと思う。勝った!小さい頃からどこか心の隅にあった小夏ちゃんへの劣等感。奪ったんだ!秋ちゃんは私のだ。これからはどんどんアピールして秋ちゃんに好きになってもらって私だけを見てほしい!わたしならできる!もう私の邪魔をする人はいない!小夏ちゃんと同じくらい私も可愛いと思う。最大のライバルは私には絶対勝てない。兄妹が仇になったから。これからはとおもっていたのに……なんで
帰ってきたの?鈴音ちゃん!
そこからは一方的だった。凄く可愛くなった秋ちゃんの幼馴染で許嫁。しかも向こうはしっかり覚えててさらに一緒に住むとか!ふざけないで!そんなことわたしが絶対に許さない!私は一分一秒でも秋ちゃんの側にいたくて昼休みに秋ちゃんの教室に顔を出した。
そこには鈴音ちゃんはいたが秋ちゃんと小夏ちゃんがいなかった。私は
「鈴音ちゃん?秋ちゃんどこにいるかわかる?」
すると鈴音ちゃんが
「さぁ?私も一緒にお昼食べたかったけどなんか用事があるとかでどっかいっちゃったの!」
鈴音ちゃんはしょんぼりしていたがすぐに
「小夏も同じようなタイミングで出ていったの!もしかして秋くんの用事って小夏かな?」
私はなぜかわかんないけど凄く嫌な気がした。確信はない。でも小夏ちゃんはまだ絶対に秋ちゃんを諦めてない。私はいてもたってもいられず教室を後にし、二人をさがした。昼休憩もあと10分で終わるというところで通りかかった科学準備室で秋ちゃんと小夏ちゃんの声がきこえた。なにこの声は?
凄く甘い声を出しながら秋ちゃんと話す小夏ちゃん。それに優しく答える秋ちゃん。どういうこと?すると科学準備室から先に小夏ちゃんが出てきて秋ちゃんに
「今日は秋から求めてくれて嬉しかった。気持ち良かった。またね。」
小夏ちゃんが何を言ってるのかわからなかった。違う!わかったんだ。でもそれを理解したくなかった。だって私の考えが正しければ二人はこの教室でセックスをしてたんだ。しかも今日はと言うことは前もあった?
つまり二人は前から肉体関係があったということだ。私は呆然と教室の前で立っていると秋ちゃんが出てきた。去っていった小夏ちゃんを見惚れるように。そして秋ちゃんは私に気づくことなく教室にもどっていった。
いつから?なんで?私のこと考えてくれるっていってくれたのに!どうして?
私の中で黒い何かが私を埋め尽くす。そうか!小夏ちゃんは強引に秋ちゃんを犯しそれを脅しに使ったんだ!小夏ちゃんらしい姑息な手だ。それなら今度はわたしが小夏ちゃんから秋ちゃんのすべてを奪ってやる!いいよね?最初に奪ったのは小夏ちゃんなんだから。
私は廊下で一人不気味に笑った。
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