第6話

今、僕の部屋には冬華さんが来ている。寝るときの服みたいだが妙に色気があって正直直視は出来ない。目を逸しながら僕は


「えーと、冬華さん?何か用事があったのでしょうか?話とか?」


と聞いてみたが反応がない。どうしたんだろと顔を覗きこもうとしたら


「あ、あのね、秋ちゃん!私達血が繋がってないのは聞いたでしょ?さらに秋ちゃんは記憶がないからもう兄妹って感じじゃなくて他人に近い感じでしょ?だ、だだからね、こんな秋ちゃんが大変な時に不謹慎だとはおもうんだけどね、私は少し嬉しかったの。だって今秋ちゃんは私を姉じゃなくて他人の女って感覚でいてくれるから。」


顔を真っ赤にした冬華さん。冬華さんの言った通り、僕は今冬華さんの事を姉としては見れない。それに血が繋がってないって事も踏まえると僕は冬華さんを女として見てるんだろう。


じゃあ冬華さんは何が言いたいのか僕はそこまで鈍感じゃない。つまり冬華さんは


「わたしね、秋ちゃんのことが出会ったときから一人の男の子として好きなの。」


純粋に嬉しかった。こんな綺麗な人に好意を寄せられるというのは。でもなぜこのタイミングで告白をしてきたのか?それが引っかかる。以前はしなかったのか?


「ありがとうございます。とても嬉しいです。ですがなぜこのタイミングで告白なのですか?」


すると決意した目で


「前までは兄妹としてしか見てもらえてなかったの秋ちゃんには。頼りになる姉として。だからそれを壊すのが怖かった。せっかく信頼してもらえたのにそれを自ら壊すのが怖かったの。」


涙を流す冬華さん。


「でも今の秋ちゃんは……だからもう我慢するのはやめたの。だから今言おうと思ったの。ごめんね、ずるいとは思ったけどもう我慢できないから!」


そう言って僕の頬に手を当ててそっと冬華さんの唇と僕の唇を合わせた。びっくりしたがなぜか僕はそれを受け入れた。


「んんっ……チュッ…はぁはぁ」


蕩けた表情の冬華さん。とても満足げに唇を離した。


「やっと秋ちゃんとキスできた。嬉しい。」


そんな冬華さんの表情をみていると僕の中の何かが壊れた気がした。おそらく以前の僕の中にあった姉、冬華としての存在が今のキスで完全に消えたのだ。


その後しばらくお話してそういえばキスをしてしまってまだ返事を返せてなかったので


「冬華さん、僕は正直まだ自分の気持ちがわからなくてだか…」


と僕の言葉を口で塞がれた。二度目のキスだ。しかもさっきよりも濃厚な理性が溶けて二人とも快楽に飲まれてしまうようなキス。


「んんっ、はぁ、んちゅ……んんっ、ちゅっはぁはぁ」


どのくらいしたのだろう。しばらく二人して余韻を楽しんだあと冬華さんが


「まだ答えは言わなくていいよ?でもこれから私しかいらないって言ってもらうためにいっぱいアピールするから!だからその時が来たら聞かせてほしいかな。今日はありがと。おやすみ」


といって部屋から出ていった。とにかくすごかった。なんだか大人になった気分がしてとても満たされた。僕は冬華さんのことをどう思っているのか真剣に考えようとおもった。


秋の部屋を出てすぐに私は小夏ちゃんの部屋にいった。


「小夏ちゃん?ちょっといいかな?」


「………いいよ」


久しぶりに入る小夏の部屋。中に入るとそこにはベットの上で体育座りをしている小夏。手には秋のパンツが握られていた。あーやっぱりね


「………なに?」


「私さっき秋ちゃんに告白してキスもしてきた。」


「っっ!!」


「でも返事はまだもらわなかったよ。だからこれからはどんどんアピールしていくつもり!それを小夏ちゃんにはつたえときたかったの。」


「……ずるいよ、冬華ちゃんは」


「……うん、わかってる。でももう私は止まらないから!それだけ。ごめんね夜遅くに。…あ、あとちゃんとそれは返しといたほうがいいからね、おやすみ」


急に私の部屋にきたと思ったらやっぱりそういう事だったんだ。冬華ちゃんが秋の事を異性として好きなことは出会ったときから知ってた。だって私とおんなじ目をしてたから。


私は絶対に無理な恋。だけど冬華ちゃんならできる恋。こんなのはあんまりだ。………なんで私のほうが先に好きになってずっと一緒にいたのになんで!


………記憶喪失ったって事は私との思い出はなくなりただただ血が繋がっただけの双子。


私の恋は最初から叶わない。過去の思い出も私しか知らない。秋からしたら他人同然。


そんなのなんか許せない。秋や冬華ちゃんだけが幸せになるなんてあんまりじゃない!


どうせ結婚もできないし彼女にだってなれない。秋の一番にはどうしても私はなれない。私の一番は秋だけなのに。


………なら秋の初めてを私が誰よりも早く奪ってやる!そして刻んでやる、秋の初めては私だと言う事を。


そしてみんなが寝静まった頃、私は秋の部屋に行くことにした。

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