第11話

夕食中、お母さんから学校の事でいろいろと聞かれて疲れたがお母さんは楽しそうに話していたので良かったと思う。前の僕がかなり心配かけたと思うから。


一つ気になるとしたら夕食中小夏と冬華は一度も目を合わさず喋らずモクモクとご飯を食べていたことだ。以前の記憶がない僕は二人の仲をよく知らない。


それからお風呂に入ってから部屋に戻るともうすでに小夏が部屋に来ていた。急のことで僕は驚いていると


「その感じだと昨日言ったことわすれてるでしょ!で〜もしかしてこのあと冬華ちゃんが来る感じか〜。どうしよっか?」


と楽しそうに話す小夏。そういえばそんな約束をしていた。もししなければ僕と小夏が同意じゃないとはいえセックスをした事を冬華さんにバラされる。


もしバレたら冬華さんは悲しむと思う。それとも愛想を尽かされるかもしれない。それだけは嫌だった。


「忘れてた事はごめん。でも約束は守るよ、少し遅くなるかもしれないから終わったら小夏さんの部屋に行ってもいいかな?」


すると小夏は二つ返事でわかった。待ってる。といって部屋に戻ってくれた。僕は僕からじゃないにしても二人の女の子に対して不誠実な事をしている。わかっているのに他に方法がない。


とりあえず今は切り替えて冬華さんとお話をしよう。と切り替えたあと冬華さんがやってきた。


「ごめんね、夜遅くに。ちょっとだけでいいからお話したくて。」


「大丈夫ですよ。僕も冬華さんと話すの楽しいので。」


すると笑顔になり僕の隣に腰掛けた。肩と肩が触れ合う距離に来てかなりドキドキしたが話してる途中でドキドキも落ち着いてきた。


最初は学校での事や前の記憶の時の話などをしたあと、急に黙った冬華さん。そして時刻が12時をすぎる頃に意を決した冬華さんは顔を赤くして


「し、秋ちゃん!最後にキスしてほしいな?」


冬華さんは僕の事を好きだと言ってくれたが僕はまだ返事を出せてない状況でキスをしてもいいのだろうか?いくら冬華さんとは一度キスをしたからと言って。僕がどうしたらいいのか悩んでいると


「大丈夫だよ?私がしたいだけだから。確かに付き合ってない段階でキスするのはどうかと思うけど秋ちゃんだから、いいの!私を好きになってもらいたいから!だから、お願い」


僕は小さく頷き冬華さんの肩をもち顔を近づけ唇にキスをした。数秒してすぐに離そうとしたが


「…………もう、ちょっと」


僕は自分の理性より本能でもう一度冬華さんにキスをした。次はじっくり感触を確かめ合うように、この瞬間だけは二人だけの世界のような気分になっているとそこに世界を壊すものが現れた。


「秋?ちょっと長過ぎじゃない?早くわたしの」


いいかけて止まった。小夏に冬華さんとキスをしているところを見られた。ばっ!っと冬華さんを離し、一瞬冬華さんもなぜ?と言う顔をしたがすぐに視線に気づき


「………こ、こなつちゃん?」


なんとも言えない顔をしてそれだけ言ったあと黙り込んだ。


それに対して小夏は


「いいよ!いいよ!全然。冬華ちゃんが秋の事を好きなのは知ってたしこないだちゃんと伝えてくれたもんね!そっかーまたキスをしたんだー」


と言ってからもそのまま僕の部屋に居座った。


「えっと、小夏ちゃん?なんでこんな時間に秋ちゃんの部屋にきたの?」


僕はドキリとしたが小夏は、別にーと言ってから

僕の近くに来て


「私も秋に用事があっただけだけど?そんなに私が秋の部屋にいくのはおかしいかな?」


とまるで冬華さんを挑発するように言った小夏。対して冬華さんは首を横に振るだけ。するといきなり小夏が


僕に近づき強引に僕の唇を奪った。


「「えっ!!」」


一瞬の出来事で僕はもちろん、冬華さんもびっくりして言葉が出なかった。そんな二人をみてクスッと笑ったあと


「秋、今日はそれでいいや。明日からはちゃんと約束守ってね?」


じゃあねーと言って部屋を出ていった。僕らは放心状態になり黙ったまんまだったがその沈黙を冬華さんが


「……やっぱり諦めてないんだ、小夏ちゃん。」


と小さく何か言ったあと僕の方をみて


「秋ちゃん、小夏ちゃんとの約束ってなに?」


さっきまでの笑顔や顔を赤らめて物欲しそうな顔とはまるで別人のような真剣な表情で僕に問いかけた。


なんて答えたらいいかわからずに言葉を選んで選んで口にだそうとしたがそれを冬華さんに止められた。唇で。さっきよりも濃厚で色気のあるやつで。そっと離したあと


「私!負けないから」


と言って部屋を出た。僕はただただ黙って出ていった扉を見ることしかできなかった。

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