第二章 堕ちてから始まる

第26話

夢を見た。小さい僕と冬華さんと小夏と鈴音が四人仲良く遊んでる夢だ。僕には馴染みのない光景でどうにもしっくりこない。もし何も間違いないが起こらなければ今でもこんなふうに仲良くできていたのだろうか?今となっては幻だ。


夢が終わり、カーテンからさす太陽の光で重い瞼が開く。いよいよだ。これから僕らの新たな一日が始まる。


「必ず成し遂げようね、[冬華]」





新たな日を迎える前日の夜


「これからどうやって二人を始末するの、冬華さん?」


僕はこれからの事を冬華さんに聞いた。すると

冬華さんは少し考えてから


「秋ちゃん、人を壊すにはどうしたらいいと思う?」


「壊す?そうだなー僕が記憶喪失になるくらい壊れたのは多分絶望したからだと思う。今までの話を聞いた感じ」


「そうだね。じゃあ二人にとっての絶望ってなんだとおもう?」


二人にとっての絶望?なんだろうか。………あっ!


「…………僕?」


「そう!二人にとっての絶望は秋ちゃんに相手にされないことだと思うの」


「そうか!なら僕は二人を無視したら、関わらなければいいってこと?」


「うんう、それは違う。もし秋ちゃんが無視してもどうせ何らかの手段で関わらざるを得なくなる。それに今は二人に秋ちゃんの弱みを握られてるからどのみち関わらないなんて無理だね。」


それもそうだ。僕は今二人に弱みを握られてる。小夏のはもう意味をなくしてるけど。


「そうだね。じゃあどうしようか」


僕が考えていると冬華さんが


「……弱みを利用しよう。」


「弱みを利用?どういうこと?」


すると凄く言いにくそうに口を開けたり閉じたりをしたあと意を決して


「秋ちゃんが二人と付き合うの。」


「………えっ!?」


何を言ってるのかわからない。すると


「ち、ちがうよ!私と別れて二人と付き合ってってことじゃないの!だから安心して」


びっくりした。冬華さんには何か考えがあるのか続けて


「秋ちゃん、絶望をより深く味わうにはどうすればいいとおもう?」


なんだろ?


「それはね、最初に幸せを与えることだよ。その後どん底に落とせばその落差で人は簡単に絶望するの。だからね………秋ちゃんはこれから二人と恋人になるの。それがあの二人の幸せだから」


そういうことか。冬華さんは続けて


「だから私と付き合ってるのを二人には内緒にしながら秋ちゃんは本気のフリをして二人とも付き合うの。そこで二人の弱みを探って反撃するの!」


確かにこのやり方なら幸せからの絶望はできるだろう。でも


「冬華さんは嫌じゃないの?いくら本気のフリだとしても僕が二人と恋人になるの。」


すると苦虫を噛んだような顔をした冬華さんが


「そんなの嫌にきまってるよ!でもそうでもしないと、二人は絶望しないとどこまでも邪魔をしてくる。昔からそうだったもん!だか」


僕は冬華さんが言う終わる前に抱きしめた。


「わかったよ。大丈夫。僕が愛してるのは冬華さんただ一人だから!」


僕は抱きしめる力を強めた。すると冬華さんも強く抱きしめ返してきた。


「あ、そうだ。なら冬華さんが安心できるようにサインをきめよう!」


「サイン?」


意味を理解できてない冬華さんが首を傾げて聞いてきたので僕は優しく冬華さんの頭を撫でながら


「うん。今お芝居をしてるよってときは僕は[俺]って一人称を変える。それなら冬華さんは今お芝居してるんだって納得できるでしょ?」


するとなるほど〜って感じで頷く冬華さん。また優しく撫でてから


「あともう一つ。これから二人だけのときは[冬華]って呼んでもいいかな?」


すると余程嬉しかったのか勢いよくキスをされた。しばらくキスをしたあと


「うれしい。私は今凄く幸せだよ?これならちょっとの間耐えられるよ!」


といって抱きしめる力を強めた。僕もそれに答えるように力を強めたあと


「これからだよ。もっと幸せになるのはね。だから二人で頑張ろう。少しの間寂しい思いをさせてしまうけど必ず成し遂げようね!そしたら二人でずっと一緒にいよう。」


僕らは誓いのキスをした。深くまるで一つに溶け合うように。

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