第36話 再会


アレクとソニアはフェンリル奴隷商館に来ている。


ソニアが誘拐されてからに1日後のことである。


大柄の男に渡した金貨320枚は無事に取り返すことができた。




ふかふかのソファにアレクとソニアが並んで座り、対面に商館のアベルが座っている。


「今回の御用件はなんでしょうか?」


「金貨300枚用意したので、レインを返していただきたいのです。」




それを聞いたアベルは信じられないというような顔をしていた。


「僅か5日程でよく金貨300枚を工面できましたな」


「偶然、割のいい依頼を受けさせていただいたのですよ」


アベルは少しの間、沈黙していた。


「左様でございますか。それはようございましたな。それでは、レイン殿をお連れしてまいりますので少しお待ちくだされ」




アベルは立ち上がり、部屋の扉から出て行った。




しばらくすると、開かれた扉から出てきたのはレインだった。




「お姉ちゃん!」


ソニアはレインに正面から抱き着いた。


「ソニア、無事に出会えて本当に良かったです。」


アレクは二人の再会を嬉しく眺めていた。




しばらくして、二人が離れた後、レインはアレクに向き合った。


「アレクさん、あれがとうございます。」


レインは頭を下げた。




「こちらこそ、君をこんなところに閉じ込めてしまってすまなかった。」


「もういいんです。だってアレクさんは私たちを助けてくれたじゃないですか。だから私たちはアレクさんに感謝しています。」






それから三人は商館の正面玄関を抜けて外に出た。




「さて、これで君たちは自由の身だ。これで本当にさよならだ。お元気で。じゃあ、僕はこれにて失礼するよ」




アレクは二人に背を向けて歩き始めた。


すると、最初の一歩目を踏み出したところで身体がこれ以上前に進まない。


後ろを振り返って見ると、ソニアがアレクの袖を、レインが腰の服を摘まんでいた。




さっきよりも強い力で振り切ろうとしても、アレクは動けなかった。


「どこへ行くんですか、アレクさん」


それは姉妹が同時に発した言葉だった。




「だって、もう終わりだろう。」


「終わりじゃありませんよ。アレクさん、私たちを猫族の里まで送り届けてください。そこでおもてなしをさせていただきますから」


「アレクさん、私からのファーストキスを奪っておいて、逃げるんですか?」


それを聞いたアレクは戸惑う。


「アレクさん、ファーストキスってどういうことですか?詳しく聞かせてください!」




レインから問い詰められるアレクは、やれやれ、この二人とはもうしばらく旅が続きそうだと思うのだった。

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