第32話 討伐証明


キラーベア30数体が二人を取り囲んでいる。


熟練の冒険者どころか、国の騎士軍団でも死人がでるほどである。


もはや、逃げることはできない。




「これは、さすがにまずいんじゃないですか?」


ソニアはアレクにしがみついている。




キラーベアの一頭がアレクに向かって突進してくる。


思わずソニアは目を瞑る。




アレクは指をパチンと鳴らすと、キラーベアの身体が発火した。


発火により悲鳴を上げながらキラーベアの身体が焦げた状態で絶命していた。




続けざまに周囲のキラーベアに重力魔法をかけて動きを止め、一体ごとに止めの魔法で打ち抜いて行った。


全てのキラーベアを討伐したアレクは、額の中央にある角を討伐証明として削ぎ落としていった。




淡々と角を削ぎ落としている光景を見たソニアは茫然としていた。


「どうしたんだ?」


呼びかけにハッとしたソニアはようやく応答した。


「あっ、いえなんでもありません」


そこに笑顔はなく、どこか余所余所しいように見えた。




換金するために二人はギルドへ向かった。




「私はここで待っています」


ソニアは入口前で立ち止まっている。


「どうしたんだ?元気がないように見えるぞ?」


アレクの問いかけにソニア笑顔で返答した。


「なんでもないですよ。私はここでアレクさんが戻ってくのを楽しみに待っています。」


その笑顔はどこか無理をして笑っているように見えた。


もしかしたら、ギルド内部で誰かに絡まれることを想定しているのかもしれない。


「わかった。待っていてくれ」


アレクはギルドの中へ入っていった。




キラーベアの角32個を討伐証明としてギルドに持ち込んだところ、受付嬢から信じられないという顔をされた。


一人の成果としてあり得ない報酬だったから当然である。




ランクアップの話とかやらで話が長くなりそうだったので、今は聞きたくないと断った。




報奨金として金貨320枚を手に入れたアレクは、楽しみに待っているソニアがいる出口を出た。




しかし、そこにソニアはいなかった。


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