第22話 猫耳少女の涙
アレクが商館の主に姉の猫耳少女の売値を聞いた時、少女の顔は盗賊に奴隷として捕らえられた時と同じような絶望の表情をしていた。
「歳は17歳となると今が旬の頃合いで売値の価格がピークになります。金貨100枚での買取りでいかがでしょうかな」
商館の主の提示に対して、あと少し足りない。何かもっと売値の価格を上げる要素はないかと考えたとき、ふとイチかバチかの賭けを思いついた。
「実はこの娘は処女でございます」
アレクからそれを聞いた姉の猫耳少女の身体からガタっと音が聞こえた。
座ったまま足を後ろに引いたことでソフアに当たり、音が生じたものだと考えられる。
膝の上には握り拳をキュッと握った状態で置かれていて、背筋と猫耳は伸びた状態で首だけが下を向いている。
おそらく、恥ずかしさで頬を染めながら、それを隠すために俯いているのだと想像するのは容易かった。
その姿をみると、カマをかけるためについた嘘が本当だったらしい。
商館のアベルも処女であることは本当だと察したようだ。
「左様でございますか、誰もお手付きがないとは素晴らしい!それでは金貨150枚でいかがでですかな」
処女の価値として金貨50枚の値がついたようだ。
「それで、いかがいたしましょう。お売りになりますかな?」
姉の猫耳少女を売った資金でメイド服姿の猫耳少女を金貨100枚で購入すれば、残りの金貨50枚で日常を過ごすのも悪くないだろう。
姉の猫耳少女の依頼は妹を助けて欲しいという依頼だったのだから、自分がどうなったとしても依頼は完遂されたことになる。利益の金貨50枚は妹を助けたお礼として受け取ったと思えは筋が通るのではないだろうか。
そう考えたとき、何やら恐ろしい視線を感じた。
妹であるメイド服姿の猫耳少女がこちらを鋭く睨んでいる。それは今にも殺されそうな冷酷な目つきだった。
隣の猫耳少女を見ると、微かに震えながらキュッと握りしめた拳には、彼女の瞳から零れ落ちたいくつもの雫が落ちていた。
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