第16話 一途の願い


茶髪にモフモフしたくなるような猫耳がついた少女に全員の視線が釘付けになっていた。




「こいつは上物だぜ。女の猫族は奴隷としての市場価値が高く、変態貴族に高く売ることができる」




その言葉を聞いた猫耳少女の顔が青ざめる。


「嫌・・嫌よ、こんなところで奴隷になんかなりたくないわ」




二人の盗賊が少女を取り押えようと襲い掛かる。


少女はそれを振り払うように必死に抵抗する。




少女の必死の抵抗も虚しく、盗賊に抑えられ、両手首を腰の後ろに回されて縄で締め上げようとされていた。


「俺たちは嘘はついていねぇ。何かを差し出せば命だけは見逃してやる約束だったからな。


奴隷になってからのことは知ったこっちゃねぇ。」




取り押えられた少女は下を向いたまま抵抗することさえやめてしまった。


「お願い・・・誰か助けて」


一途の願いから零れ落ちたその言葉は誰にも届くことがないと思えるほどの小さな声だった。


だが、その言葉を掬い上げる者がいた。




「待て!」




その言葉を聞いた猫耳少女の耳が微かに動いた。


少女は顔を上げて、声が聞こえた主の方を見る。




アレクは盗賊の一人に剣を向けられていた


「邪魔するなら、見逃した命でも容赦はしねぇ」




猫耳少女は救われたような希望に満ちた表情でアレクを見つめていた。


だが、アレクの言葉は少女の希望を裏切る言葉だった。




「邪魔なんてしない。その代わり俺も奴隷にしてくれ」




その言葉を聞いた猫耳少女の表情は一途の願いが打ち砕かれた絶望のようだった。


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