第15話 フードをめくると、そこはモフモフの猫耳少女だった


木材の車輪がゴロゴロと地面を転がる音が聞こえる。


アレクは時折揺れる馬車の荷車に乗っていた。


エリスに別れを告げないで国を出た。


今頃、僕が仕組んだ事実を知ったエリスの姿を想像すると身震いした。




隣国に商品の仕入れに行く初老のおじいさんの荷車に乗せて欲しいと頼んだら、格安の運賃を払うことで了承してくれた。


おじいさんはもう一人同乗者がいるが、仲良くやってくれと伝えると馬車は走りだした。




空っぽの荷車の中にはたしかにもう一人、フードを被った小柄な人がいた。


素性が気になったが、互いに非干渉の方が良いだろうと思い、無言のまま馬車は森の中を順調に進んでいた。




だが、その時、突如大きく馬車が揺れた。


順調に走行していた馬車が急停止したのだ。




おじいさんと誰かが話をしている声が聞こえる。


荷車の幕を開けられ覗きこまれた顔はおじいさんではなく、いかにも悪党だと思わせる盗賊の姿だったのだ。


おじいさんを含めた三人は馬車から降ろされた。




目の前には同じく三人の盗賊に取り囲まれていた。


「ヘヘ、こいつはついてるぜ、同乗者が護衛じゃなくただの平民だったとはな」


「俺たちは盗賊だ。命が惜しくばそれに見合ったものを俺たちに差し出せば、命だけは助けてやる」




一人の盗賊がおじいさんに剣を向けた。


「金をやる。じゃから見逃してくれ」


「俺たちが欲しいのは、じいさんのはした金じゃない。欲しいのはアンタの馬車だ」


「ワシの大事な商売道具、それだけはカンベンしてくれ」


おじいさんは必死に懇願した。




「ダメだ。アンタは俺たちに荷車の中には屈強な護衛がいると俺たちを脅して嘘をついた。馬車は頂いていく」




「年寄をいじめよってからに」


おじいさんは号泣した。




今度はアレクに剣が向けれた。


「お前は何を差し出せる」


アレクは懐から布に包まれた短刀を差し出した。




それを受け取った盗賊は顔が引きつっていた


「お前、これをどこで手に入れた」


「15歳の誕生日に幼馴染からいただいたものです」


「こいつは剣の名家、オールステイン家の家紋が入った名刀。売れば相当高く値がつく代物じゃないか」




成人としてエリスから贈られ、大事にしなさいと言われたものだった。ごめんよエリス


「よし、合格だ。お前は見逃してやる」


おじいさんとフード被った人がこちらを見てくる痛い視線が伝わってきた。




最後にフードを被った小柄な人物に剣が向けられた。


「お前は何を差し出せる」




フードを被った人物は少しの沈黙の後、言葉を発した


「私には・・・何も、差し出せるものはございません」




それを聞いた盗賊は激怒した


「お前だけ何もなしが許されるわけないだろう。」


盗賊は頭のフードを掴み、後ろへめくり下ろした。




フードの下にはモフモフした猫耳の美しい少女がいた。




「なんだ、ちゃんと持ってるじゃないか」




それを見た盗賊はニタリと笑った。


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