第40話 天気の子
アレクは枯れかけている井戸の地下水脈に水魔法をかけた。
地下水脈から水が溢れ出し、その水位は井戸の上部付近にまで到達した。
本来なら水魔法攻撃として使うのを生活魔法として転用したのだ。
村長のおじいさんは大喜びで「早速この水を農作物に使うのじゃ」と言っていた。
「でしたら、もっと効率のよい魔法がありますよ」
「それはどんな魔法なのじゃ?」
「この地に雨を降らせます。」
「そんなことできるはずが・・・・」
おじいさんは信じられないと言わんとする前にアレクは上空に右手を上げた。
雨は降らない。
「やはり、雨なんて・・・」
「おじいさん!空を見上げてください!」
レインの掛け声でおじいさんは空を見上げる。
上空を見上げると、さっきまで晴れていた空に少しずつ薄暗い雲が地上を覆い被さるように集まってきている。
「なんじゃと、ま、まさか・・・」
やがて、ぽつっと小さな雫が身体に当たった。
そしてそれは、ザーと音を立てて小さなスコールのような形に変わり、地面や農作物に水が供給されていく。
「雨だ!いつぶりかの雨が降ってきたぞ! これで農作物が潤う!」
村の住人たちは雨に濡れることを厭わず、外に出てその雨を恩恵として受けた。
その雨は数分で止み、空にはさっきまでの薄暗い雲が嘘のように晴れ、太陽の光で虹が掛かっていた。
「わぁ、きれい!」
「今まで聞いたことしかなかったこの光景、初めて見ました。」
ソニアとレインも虹は初めてみるようだった、
村長のおじいさんを見ると、おじいさんは涙を流していた。
「おぉ、素晴らしい! 其方は、『天気の子』じゃ」
こうして、アレクは『天気の子』としての異名をこの村に轟かせることになったのだった。
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