第11話 英雄になれない


エリスの目の前には一人の男の背中があった。




「どうしてアレクがここにいるのよ・・・」




その声はいつもの強みのある元気な声ではなく、消えてしまいそうなとても弱い声音だった。


エリスは助けにきてくれても嬉しくはなかった。


アレクはエリスより弱い。


どう考えてもドラゴンと戦っても勝てるはずがない。




「お願いだから逃げて、アンタが敵うはずがないんだから」




その声は今にも泣きそうな声だった。


エリスはアレクに生きていて欲しい




その時、フードを被った男が右手を前に出した。


それは再び、爆炎の業火を出す合図だった。


ドラゴンの口には炎が集まり、それは一つの火球を成していた。




「アレク!・・・・」


叫んだエリスは立ち上がれない。


もはやエリスには戦う心が折れていた。




業火が二人を飲み込んだ。

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