第10話 絶望的状況


エリスはドラゴンと向かい合っている。


隣にはフードで顔を隠した男が立っている。




「そこのアンタ、何者なの?」


エリスの呼びかけに男は答えない


「私は国家騎士エリス・オールステイン、此度の件により大人しく投降しなさい。でなければ私が相手になります」


男は返事をしない。一応、声をかけてみたものの、こうなることは想定できた。


戦うしかない。


他の騎士団員たちには手をださないように指示を出している。


これは騎士団員たちと協力しても勝てる相手ではない。命を落とすだけだからだ。


私が時間を稼いでいる間に一人でも多くの民を逃がすことができれば、それでいい。




エリスは覚悟を決めた。


全力でフードを被った男に斬り掛かった。


ガキィという鈍くて高い音が聞こえたと共に、握っていた剣に伝わってきたのは同じ力で反発された反動だった。ドラゴンの爪で剣を受け止められていたのだ。


もう片方の腕がエリスを切り裂こうとしてきたところを剣で受け止めたが、力負けにより飛ばされて身体を地面に滑らせてしまった。


なんとか立ち上がったエリスは確信した。やはりこの男は天災級のドラゴンを使役しているのだ。




その後もドラゴンを相手にエリスは挑み続けた。


剣の刃が当たっても刃が通らない。それは敵う見込みがないことを意味していた。


もはやエリスの体力は削ぎとられ。剣で身体を支えながら片膝を地につけていた。


それでもエリスの眼は諦めてはいなかった。




だがその時、誰かがエリスの前に立ち塞がった。


その後ろ姿を見上げたエリスの眼は絶望に変わってしまったのだった。

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