第13話 嘘つき、大嫌い
ゆっくりと目を開けたエリスは辺りを見渡してみる。
アレクの後ろから微かに熱の名残が伝わってくるが、周辺に影響は及んでいなかった。
炎の火球をまともに受けたアレクは無傷で立っていた。
エリスはアレクの目の前で何が起きたのかわからなかった。
再び、フードを被った男が指示を出すとドラゴンが火球を形成し始めた。
最初に町を襲った威力に匹敵するほどの火球がアレクを襲った。
アレクが火球の威力を右腕に吸い込ませて消えていく光景をエリスは見た。
アレクにこのような力があることをエリスは知らなかった。
再び無傷で立っていたアレクは剣を抜き、ドラゴンに切り掛かった。
その動きは達人であるかのように速く、太刀筋は何でも切れると思わせるほど鋭利なものであった。
剣の腕はエリスよりも凌駕していたのだ。
アレクによってドラゴンは瞬く間に解体された。
今度はフードを被った男に向かって剣を構えると、男の足元に魔法陣が現れ、男の姿は魔法陣と共に消えてしまった。
この光景をみたエリスは自分がいかに弱い人間であるかを知った。
そしてアレクがいかに強い人間であるかを知った。
ショックだった。弱いと思い込んでいた相手に剣を教えていたのだから。
エリスはアレクが今まで強さを隠していたことが許せなかった。
エリスの頬には涙が伝っていた。
アレクがエリスを優しく包み込むように抱きしめた。
その優しさに触れた途端に、涙がさらに溢れて止まらなかった。
泣きじゃくりながらエリスは叫んだ。
「嘘つき、大嫌い」
アレクはエリスの耳元で呟いた
「異世界最強の強さを隠すために弱いふりをするのは間違っているだろうか」
やがてエリスの意識が途切れ、アレクの胸の中で眠っていた。
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