第35話 レイン・アーカデイアの憂鬱
何もない小さな空間に一つの椅子がある。その椅子に腰かけているのはレインである。
日中は一日中、椅子に腰かけながらアレクさんとソニアが金貨300枚を貯めて戻ってくるのを待っている。
扉の入口前には見張りの人が交代で立っている。
いわゆる軟禁状態である。
自分はもっとひどい目にあうと覚悟していたから、この状況が決して悪いとは思えない。
それよりも14日を過ぎると、どうなるかわからない不安の方が大きい。
あれから5日ほど経ったのでしょうか。
アレクさんと出会ってから振り回されてばかりいます。
妹を助けるために、まさか私をこんな風に使うなんて思いもしませんでした。
でも、妹を助け出すことができたのは感謝しています。
アレクさんなら、きっとどうにかしてくれる。なぜかそんな風に思わせてくれる人なんです。
今頃、妹のソニアと仲良くやっているでしょうか。
もしかして、アレクさんはもうソニアに手を出してしまったのでしょうか。いえいえそんなことは断じて許しません。とはいえ、今はこの身なのですから止めるとができないのがもどかしい。
慌てふためいていたソニアは落ち着きを取り戻す。
アレクさんを疑っているわけではありませんが、金貨300枚を用意できるでしょうか。
もしかたら、二人とも私のことを忘れているのではないでしょうか。
そう考えたら、なんだか悲しくなってきました。
レインの頬には涙が伝っていた。
ああ、もう一度ソニアとアレクさんに会いたいです。
そんなことを考えていると、扉からノックする音が聞こえた。
入室してきたのはアベルという商館の人だ。
「レインさん、お連れの方がお見えになりまたよ。どうぞこちらへお越しください。」
レインは立ち上がる。
「本当ですか?金貨300枚を用意できたんでしょうか?」
アベルは頷く。
「はい、しっかりと約束を果たしてくれましたよ」
「良かった。本当に良かった。」
泣いていることがバレないように、レインは泣いている目を擦りながら、アレクとソニアのもとへ向かっていった。
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